元鬼狩りと刀 参

123《約六時間》 ページ23

その後は無事夕食も入浴も済ませた。


薬｢よし、もういいぞ。｣

『うん。ありがとう。』


薬研に傷も見せ終え、部屋へ戻る前に手入れ部屋へ向かう。

スッ


長｢！｣

『具合はどう？』

長｢もう大分良い。明日か明後日にはもう元通りだろう。｣

『なら良かった。』


長曽祢の座る布団の横に腰を下ろすと、頬に手が伸びてきて触れる。


『？』

長｢良かった、戻ったな。｣

『．．．あ、体温。』

長｢あぁ。あれは驚いたw｣

『理由がわからないのがまた怖いんだよねぇ．．．』

長｢原因不明か．．．今後も気を付けていた方がいいかもしれんな。｣

『念の為ね〜』

長｢あァ。
．．．．．．どうして震えてるんだ？｣

『！』


微かに震えるAの手に、長曽祢が気付く。


長｢寒いか？｣

『いや．．．何だろう、武者震いにも近い感じかな。』

長｢武者震い．．．？｣

『毎年この日だけは、どうにも夜眠れない。』

長｢．．．全てが終わった日、だからか？｣

『そうかもしれないね。
本当は、日付で言えば全てが終わったのは明日なんだ。
深夜一時頃から始まって、七時前に終わった。』

長｢．．．｣

『私や多くの仲間らの命日であり、彼奴らの命日．．．』

長｢！！｣

『少しばかり気が立ってるんだ。今夜、外で物音がしても気にせず眠っていて大丈夫だからね。
それは私だろうから。』

長｢．．．そうか。｣

『ゆっくりお休み。早く治して。』

長｢あァ。おやすみ。｣


Aが手入れ部屋を出ていった。


長｢(ちゃんと眠れたら、良いんだけどな．．．)｣


審神者部屋に戻ると、そこには陸奥守が待っていた。


『！』

睦｢怖いき、今日は一緒に寝るぜよ。｣

『．．．今日は眠れそうにないよ、私。』

睦｢．．．？｣

『いいんだ、今日は。毎年だから。』

睦｢．．．身体に悪いぜよ。｣

『大丈夫。明日朝七時くらいには眠れるから。』

睦｢．．．｣

『ね？』

睦｢わしも起きちょる。｣

『いいよ、眠ってて。』

睦｢いーや、わしも起きちゅう。｣


結局、陸奥守も起きていることに。

そのまま深夜一時を過ぎると、Aがなにかに耐えるように全身に力を入れる。


睦｢！？｣


その額には青筋が浮き上がり、次第に汗も出てくる。

さやに納まっている日輪を握る左手も、そうでない右手も、カタカタと震えている。

深夜二時半を過ぎると、額に痣が浮び上がる。


睦｢痣．．．？｣


徐に立ち上がったAが、外に出る。

陸奥守もそれに続いた。

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