味覚の秋【鶴蝶】 ページ5
月の出ている夕方
「A」
仕事が定時で終わった彼は真っ直ぐに帰宅した
「ただいま。今帰った」
家に着くと真っ先にリビングに向かい…
荷物を置いた後は彼女に帰宅後の挨拶をした
「あっ。カクちゃんおかえりー」
キッチンから顔を覗かせた彼女は笑顔で彼を出迎えた
「ん。ただいま」
彼女の笑顔につられた彼は自然と頬が緩んだ
「Aは今日1日、休みは満喫できたか?」
本日の彼女は非番であった
「うん。ゆっくりできたよ。
カクちゃんは…お仕事お疲れさま」
良い休日だったと告げた彼女は彼に労いの言葉をかけた
「おう。ありがとうな」
彼女のこの一言で明日も頑張れそうな彼であった
「なんか…今日の晩メシ、いつもより気合い入ってンな」
テーブルに視線を移した彼は料理の品数とクオリティに目を奪われた
「んー?今日の晩ご飯はコロッケと、とん汁だよ」
メインは揚げ物と秋の味覚がたっぷり詰まったとん汁であった
「後は…栗ごはんにかぼちゃのサラダと
果物にぶどうとモンブランを作ったよ」
市販品の果物を含めて、全体的に見て中々手の込んだ料理ばかりであった
「手作りコロッケって手間だけど…美味しいから好きなんだよね」
自分の得意料理であった
「自分がお休みの日ぐらい、手の込んだ料理を作りたいから」
週日は慌ただしく中々時間がない為ここまで料理をする気にはなれなかった
「……無理はするなよ」
仕事と家事を両立している彼女を彼なりに気遣った
「カクちゃんありがとうね」
彼女はそんな彼の優しさが少し身に染みた
「もう少しでご飯できるから。座って待ってて」
メインを揚げるだけだと告げて彼女は鍋に油を引いた
「じゃあ、オレ揚げるわ。Aはそっち仕上げて」
そんな彼女の様子を見た彼は率先して手伝う気でいた
そして彼女に最後の仕上げや盛り付けなどを任せた
「えっ…。揚げるの任せていいの?」
全て自分でやるつもりでいた彼女は彼に申し訳ない気持ちになった
「おう。手伝う」
気にするなと言って少しでも彼女の負担を減らそうと彼なりに配慮した
「ありがとうね。じゃあお願いしようかな」
彼の好意に甘えた彼女は2人で分担をして料理を仕上げた
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作者名:おりたん | 作成日時:2022年11月13日 21時