艶ノ譚参【梵天】 (ページ25)

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弦月ページ25

弓張月(ゆみはりづき)＿＿

弓に弦を張ったような形の月

現在の時刻は午後21時

弓張月が霞(かす)んだ朧気(おぼろげ)な夜…

都内のホストクラブでは

時間帯に伴い、店内では各々の卓で盛り上がりを見せていた

「白木くん可愛い！！」

1人の女性客はAに抱きつきながら言った

『ありがとう。お姉さんも可愛いよ』

Aは嫌な顔1つせず、笑顔で女性客に対応していた

『飲みすぎは禁物だよ。明日に響くからね』

キャストになりきってAは全力で接待をした

「白木くんってかっこ良くて優しいし、あたしのタイプ。

もう、ホント好きになっちゃう…」

女性はうっとりとした表情でAを見つめていた

『お姉さんのその熱視線、僕が独り占めしてあげるね』

浅草で培った演技力は、梵天に加入してからも役に立っていた

今回のAに課せられた議題は＿＿

ホスト狂の女性を上手く丸め込んで説得させること

ホストに扮(ふん)して男装したAが話の場を儲けて…

溜まりに溜まった売り掛け金を、女性に支払わせる事であった

Aは灰谷蘭と共にホストクラブに潜入

メインはAで彼は補佐役兼、護衛係

店側は梵天を頼みの綱に依頼をしてきた

首領は店側と取引をし、店長はAと口裏を合わせて事を進める方針を固めた

灰谷蘭「Aは男装もできんのか」

彼は男装姿のAを上から下まで、まじまじと見た

『あのっ、蘭さん。私…浮いていませんか？』

灰谷蘭「全然。似合ってるし馴染んでる。

意外とイけるし、男でも惚れるから大丈夫」

不安で仕方がないAをよそに、彼は本人を褒めちぎった

灰谷蘭「Aの年齢は塩梅(あんばい)がいいんだよ。

容姿は申し分ないし…性別も詐欺れる」

元・浅草一の花魁は演技力に長けているので、どんな役でもこなせた

灰谷蘭「ホント…罪な女だよな」

そう言ってAの肩を抱いた

「蘭さん。そろそろ落ち着いてください。

白木さんが困っています」

直属の部下は瞬時にAに助け舟を出した

「真面目な話、今回の任務の再確認をしますよ」

彼は頭を切り替えて上司とAに改めて説明した