八 ページ9
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とうとう侵蝕者は負傷者を出してしまった。今まで何もなかったのがおかしいのだが、どうせ偶然だ。偶々、人気がない場所にいただけな筈。
「負傷者、といいますと?」
「下級構成員十九名。いずれも武器庫の警備をしていた者たちだ。応援に駆けつけた者も結局庇いきれずに攻撃を受けてね」
エリス嬢にお出しする菓子を用意しながら首領から情報を聞き出す。後で館長に云わねばならないことが増えた。
「何故か皆攻撃を受けた箇所が洋墨で真っ黒になっていてね。驚いたよ」
「洋墨……ですか」
聞けば聞くほど侵蝕者がヨコハマに潜伏していることを実感させられる。気が滅入りそうだ。
「A君も気を付けるように」
「はい」
紅茶をカップに注ぎ、お盆を持ってドアノブに手をかけた。茶会の準備はもうできた。情報も少しは引き出せたし退散していいだろう。
それに……。
「A君」
「……はい、なんでしょうか」
退散するのが遅かったようだ。振り返ると首領は何時もと違う笑みを浮かべて此方を見ている。
首領は、私が何か知っていると考えているんだ。
「……何か、この事件について知らないかね? 些細なことでもいい」
静寂が訪れる。一歩でも間違えたら恐らく……。
「……すみません。私には全然。何か掴めたら必ず報告致しますので。それでは失礼します」
「そうかい。期待しているよ」
途端に首領は何時もの雰囲気に戻り、ヒラヒラと手を振っていた。扉を閉じればエリス嬢を呼ぶ声が聞こえる。
早くしなければ。足早にその場を去った。
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あいねこ(プロフ) - 更新はこれで終わりなのですか?とても面白かったので再開して頂けたら嬉しいです! (2020年8月23日 11時) (レス) id: a4bed0c9af (このIDを非表示/違反報告)
織川(プロフ) - 涼花凛娘さん» コメントありがとうございます……!そのようなお言葉が頂けるとは……恐縮です。これからもがんばります! (2018年3月16日 14時) (レス) id: f371f8209b (このIDを非表示/違反報告)
涼花凛娘(プロフ) - とても面白かったです!文ストと文アルのクロスオーバーは最近増えていますが、どの作品とも似ていない…といいますか。とにかく素晴らしいです!此れからも頑張ってくださいね! (2018年3月15日 19時) (レス) id: ff189753ce (このIDを非表示/違反報告)
織川(プロフ) - 巫子さん» ありがとうございます! 文アルと文ストのクロスオーバーを書くにあたって絶対会わせたかった二人なので私も書けて楽しいです! 更新がんばります! (2018年3月14日 20時) (レス) id: f371f8209b (このIDを非表示/違反報告)
巫子(プロフ) - 太宰さんとオダサク!!これからの展開が楽しみです!更新待ってます。 (2018年3月13日 22時) (レス) id: c9541627c7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:織川 | 作成日時:2018年2月25日 17時