三十八 ページ41
.
「待て待て。手前が太宰を知っているのは判った。だが行き違いみてェなもンがある。俺が云う「太宰」とお前が云ってる「太宰」は別人じゃねェか?」
「あ? 太宰なんて苗字そうそうねぇだろ。……本名は違うが」
最後に何を云ったのか聞き取れなかったが、中原はそれをスルーして話を進める。はやく本部に帰還しなければならないという焦りもあった。
突然、男が酒瓶を掲げた。
「お互いに太宰の特徴とか云えばいいだろ! な!」
「太宰の特徴だァ? ……背が高い、な」
「あー……確かに。あと犬が嫌いだよな」
此処までは一致している。中原は更に「なんか殴りたくなる」と付け加えた。
「人間失格ってよく云ってるよな。この前は図書館抜け出して入水しようとしてたんだぜ」
「……図書館?」
太宰は図書館に入り浸る人物だっただろうか。少なくとも中原の思っている太宰には合わない。
「矢っ張り違うな。同姓同名の別人だ」
「マジかよ……。はやく此処から出て探しにいかねぇと」
中原の横を酒瓶を提げた男が通る。
「待て。其処から出て行くよりも彼方からの方がいい。監視の目につくぞ」
非常階段を指差す。此処にも南京錠やら鎖が巻き付いており、中原は簡単に取り外した。少し手間がかかるが死体を見られては困る。口封じに殺すのはなるべく避けたい。
「へぇ、お前頭良いな! 確かに俺は外部の人間だ。見られちゃあ困る。お前はこの
男は階段を下りていき、中原もそれに続いた。
「じゃあな。俺は太宰とか他の奴らを探しに行く」
「俺は未だ仕事があるな。そういえば手前の名前――」
男の方へ振り向くと其処には誰もいなかった。少し、酒の香りが漂う。掃除屋に呼びかけられるまで中原は呆然と其処に立ち尽くしていた。
終わり ログインすれば
この作者の新作が読める(完全無料)
←三十七
146人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「文豪ストレイドッグス」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
あいねこ(プロフ) - 更新はこれで終わりなのですか?とても面白かったので再開して頂けたら嬉しいです! (2020年8月23日 11時) (レス) id: a4bed0c9af (このIDを非表示/違反報告)
織川(プロフ) - 涼花凛娘さん» コメントありがとうございます……!そのようなお言葉が頂けるとは……恐縮です。これからもがんばります! (2018年3月16日 14時) (レス) id: f371f8209b (このIDを非表示/違反報告)
涼花凛娘(プロフ) - とても面白かったです!文ストと文アルのクロスオーバーは最近増えていますが、どの作品とも似ていない…といいますか。とにかく素晴らしいです!此れからも頑張ってくださいね! (2018年3月15日 19時) (レス) id: ff189753ce (このIDを非表示/違反報告)
織川(プロフ) - 巫子さん» ありがとうございます! 文アルと文ストのクロスオーバーを書くにあたって絶対会わせたかった二人なので私も書けて楽しいです! 更新がんばります! (2018年3月14日 20時) (レス) id: f371f8209b (このIDを非表示/違反報告)
巫子(プロフ) - 太宰さんとオダサク!!これからの展開が楽しみです!更新待ってます。 (2018年3月13日 22時) (レス) id: c9541627c7 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:織川 | 作成日時:2018年2月25日 17時