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そこまで多くない仕事を終えた私は街を巡回して先生を探していた。運がいいことに徳田先生を見つけ、直ぐに捕まえた。今は近くのカフェで休憩中だ。
「やっと五人目……」
「見つかってない人ってそんなにいるの? かなりまずいんじゃない?」
まずい事態だというのは此方も十分判っている。だからこうして探し回っていたのだ。労いの言葉くらいかけてくれてもいいのに。
「嗚呼、そういえば何時もの会派メンバーで行かせたら泉先生が来る筈じゃないですか。なのに今日は如何して……」
徳田先生は私から視線を外し、手元の珈琲カップを見つめた。
「喧嘩、したんだ」
何時も通りじゃないか、そう云おうとしたが、徳田先生の纏う雰囲気はそう云わせようとしなかった。
「そんなに酷い喧嘩だったんですか? 泉先生の食べ物を炙る行為が好きじゃない、とかよりも?」
徳田先生と泉先生が口論になっているのはよく見かけた。図書館では当たり前の光景だ。それが今回は違う。一体なんなのか予想できなかった。
「理由が何であれ、ちゃんと仲直りしてくださいね。これから図書館で顔合わせるの気まずくなるでしょう。尾崎先生だって心配します」
「……判ってるよ」
泉先生の代打で来たのが島崎先生。徳田先生とも仲が良い彼なら詳しい事情を知っているかもしれない。早いとこ見つけ出して聞こう。
「兎に角、徳田先生は「武装探偵社」という処に行ってください。私は所属している組織の関係上、彼処にはあまり近づけませんので……。一人で行けますか?」
昨夜、探偵社に寄れたのは辺りに誰もおらず、おまけに夜中だった為、私が車に乗っていることが判りにくかったからだ。今は昼間なので行くことができない。
「地図があれば行けるよ。それぐらい一人でできるさ」
「ありがとうございます。地図は……」
メモ用紙に探偵社の場所を書き、それを手渡す。
「あと館長から偽名を使うよう云われているみたいですが、徳田先生の場合は大丈夫だと思います」
「……なんでだい?」
「ヨコハマには「徳田秋声」という名前を持つ人間はいないので」
「……あまり意味が判らないけれど、偽名は使わなくていいんだよね」
徳田先生を見送り、次に先生を探す場所を考える。集まったのは五人。まだまだ足りない。
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あいねこ(プロフ) - 更新はこれで終わりなのですか?とても面白かったので再開して頂けたら嬉しいです! (2020年8月23日 11時) (レス) id: a4bed0c9af (このIDを非表示/違反報告)
織川(プロフ) - 涼花凛娘さん» コメントありがとうございます……!そのようなお言葉が頂けるとは……恐縮です。これからもがんばります! (2018年3月16日 14時) (レス) id: f371f8209b (このIDを非表示/違反報告)
涼花凛娘(プロフ) - とても面白かったです!文ストと文アルのクロスオーバーは最近増えていますが、どの作品とも似ていない…といいますか。とにかく素晴らしいです!此れからも頑張ってくださいね! (2018年3月15日 19時) (レス) id: ff189753ce (このIDを非表示/違反報告)
織川(プロフ) - 巫子さん» ありがとうございます! 文アルと文ストのクロスオーバーを書くにあたって絶対会わせたかった二人なので私も書けて楽しいです! 更新がんばります! (2018年3月14日 20時) (レス) id: f371f8209b (このIDを非表示/違反報告)
巫子(プロフ) - 太宰さんとオダサク!!これからの展開が楽しみです!更新待ってます。 (2018年3月13日 22時) (レス) id: c9541627c7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:織川 | 作成日時:2018年2月25日 17時