十話 ページ10
二人で肩を並べ歩く帰り道。
「叶めっちゃ歌うめーじゃん」
あれから俺達は二時間程歌いこんだ。咳払いを一つした後そんなことねーよと首を振るも、お互いのガラガラとした声に思わず笑い合う。
意外にも幸と過ごす放課後は楽しかった。案外悪いものではないのかもしれない。最近はホームルーム後に即帰宅し自宅で過ごす日々だったので、遊びに学校を出るというのは久し振りだった。まさに高校生の放課後という感じがした。
が、やはりこいつといるのはかなり疲れる。歌唱中の止まらない求婚と纏わり付く両腕が特に。
暫くは彼との放課後を遠慮しておこう。
溜め込んだ疲労を吐き出すように溜め息をついたところであることを思い出し口を開く。
「幸の金髪は地毛?」
ポロリと疑問を口から零す。
触った時に気が付いたのだが、染めているには質が良すぎる髪だった。それに俺らの通う学校は一応進学校で校則も厳しい。髪を染めようものなら退学処分が下されるだろう。
よくぞ聞いてくれましたとばかりに顔を輝かせ、幸は自慢げに髪を触り始める。えっとねえっとね!といつもの笑顔で話し始めた。
「俺ね、クウォーターなの!」
おぉ、と驚嘆の声が漏れた。
確かに鼻が高く瞳の色も若干ではあるが青みがかっている気がする。綺麗な横顔からは西洋人の血が流れていることがよく分かった。
「成長したら黒髪になることもあるらしいんだけど、俺金髪のままでさぁ。しかも色素薄いから尚更!」
途端に彼は饒舌になった。余程金髪に自信があるのだろう。風で揺れる金髪に目を奪われつつ、確かに顔も綺麗だよなと褒めてやる。「ありがとう好き大好き」と告白を交えた言葉が一息で帰ってきた。と同時に両腕が首周りに回ってくる。
ぐっと近付く彼の顔。ほらほら綺麗な顔だよ。そんな言葉を楽しげに口にしながら、彼は可愛らしく笑顔を見せた。
「ちょ、何してんだよ」
「誰もいないって、大丈大丈夫」
俺はそういう心配をしているわけではないのだが。
力ずくで幸を引き剥がす。綺麗な顔に似合わず幸はかなり力が強い。俺と背丈がさほど変わらない男子高校生なのだから当然といえば当然なのだが。
それでも、整った中性的な顔と腕まくりした袖から覗く程よく筋肉がついた腕は不釣り合いで。
引き剥がされた彼は悔しそうに唇を尖らせ「抱きつく為に筋トレしようかな」と考える素振りを見せつつ腕を組んだ。
絶対にやめてくれよ。苦笑いを浮かべつつ俺は彼の頭を軽く叩いてやった。
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青猫(プロフ) - 全然待ちますよ!作者さんのペースで大丈夫です!( ´▽`) (2021年7月23日 14時) (レス) id: fe631de70d (このIDを非表示/違反報告)
はたらま(プロフ) - 青猫さん» 更新の度コメント下さり有難う御座います!更新が遅くて本当に申し訳御座いません。今後少しずつ更新頻度を上げていこうと思っておりますので、気長にお待ち頂けると幸いで御座います。 (2021年7月23日 13時) (レス) id: 99dee8af5b (このIDを非表示/違反報告)
青猫(プロフ) - 更新ありがとうございます! (2021年7月23日 11時) (レス) id: fe631de70d (このIDを非表示/違反報告)
はたらま(プロフ) - 青猫さん» 更新する度に青猫様からコメント頂けて更新の励みになっております。有難う御座います。あまりに遅い更新では御座いますが、今後もご愛読頂けると幸いです。 (2020年11月2日 23時) (レス) id: 99dee8af5b (このIDを非表示/違反報告)
青猫(プロフ) - 通知きたとき叫びました!w忙しい中更新ありがとうございます!(*´∀`) (2020年11月1日 17時) (レス) id: fe631de70d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:はたらま | 作成日時:2016年8月12日 11時