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四話 ページ4

「あー! いた! ふざけんなよー!」

三人で雑談をしながら靴を履き替えていると、後ろから大きな足音と叫び声が聞こえた。その音と声の主は勿論桜井だろう。振り向くとやはり予想通り。そこにはぜえはあと息を切らした桜井がいた。

頬にたくさんの空気をため、怒りの表情を浮かべていた。怒りの原因がよく分からない。どうやらそれは他二人も同じのようで、口々に「なになに?」と首を傾げた。

「先行かないでよ! しかも笑と桃はなんで倉間君と仲良くなってんのー!」
「声でけえよ、馬鹿」

ぷしゅっと口内の空気が抜ける音がしたかと思えば、大音量で彼の声が校舎の玄関に響き渡る。咄嗟に俺は耳を塞ぐ。

イラついた様子の桃岡が桜井に掴みかかり取っ組み合いが始まった二人を横目に、俺は鬼塚を見上げ「俺って好かれてんのな」と苦笑した。さて帰るか、と顔を見合わせれば取っ組み合いをする二人をおいて歩き始めて。

「ちょっとー! くーらーまー君!」
「うわ……!」

タタッとリズム良く地を蹴る音がするとほぼ同時に桜井は俺の腕に抱きついてきて。自分と背丈が差ほど変わらない男子に勢いよく抱きつかれれば、当然バランスくらい崩してしまうだろう。俺は倒れそうになるも何とか耐えた。

彼の身勝手な行動に怒りを覚えるが、幸せそうに微笑む桜井を見てしまうと怒りが行き場をなくしてしまう。なんというか、憎めない奴だ。転校初日だか、クラス内でもなかなかの人気者であることは直ぐに分かった。

「そいやさ、今回はどんくらい好きなんだよ」

腕を振り何とか抵抗する俺と力いっぱい抱きつく桜井を交互に見つめ桃岡は言った。依然力を弱める等という事はせずに、そうだなぁと桜井は考える素振りを見せた。己よりも少々大きい俺を頭から爪先までを流れるように見ていく。

結論が出たのか満足げに笑うと、後ろから腕を絡めるように首に抱きついてきた。そして頬同士をくっつけると、とんでもないことを口走る。

「しゃぶれるくらいには好きだな!」
「な、何言ってんだお前…」

思わず鳥肌が立つ。そんな言葉、冗談でも言われたくない。綺麗な見た目からは想像出来ない強烈な性格に、俺は既に疲れを感じ始めていた。

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設定タグ:BL , オリジナル   
作品ジャンル:恋愛
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青猫(プロフ) - 全然待ちますよ!作者さんのペースで大丈夫です!( ´▽`) (2021年7月23日 14時) (レス) id: fe631de70d (このIDを非表示/違反報告)
はたらま(プロフ) - 青猫さん» 更新の度コメント下さり有難う御座います!更新が遅くて本当に申し訳御座いません。今後少しずつ更新頻度を上げていこうと思っておりますので、気長にお待ち頂けると幸いで御座います。 (2021年7月23日 13時) (レス) id: 99dee8af5b (このIDを非表示/違反報告)
青猫(プロフ) - 更新ありがとうございます! (2021年7月23日 11時) (レス) id: fe631de70d (このIDを非表示/違反報告)
はたらま(プロフ) - 青猫さん» 更新する度に青猫様からコメント頂けて更新の励みになっております。有難う御座います。あまりに遅い更新では御座いますが、今後もご愛読頂けると幸いです。 (2020年11月2日 23時) (レス) id: 99dee8af5b (このIDを非表示/違反報告)
青猫(プロフ) - 通知きたとき叫びました!w忙しい中更新ありがとうございます!(*´∀`) (2020年11月1日 17時) (レス) id: fe631de70d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:はたらま | 作成日時:2016年8月12日 11時

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