十三話 ページ13
「日和が忘れもんとか珍しいじゃん」
「今日寝坊しちゃって」
幸の席に腰を下ろし二人を見つめながら会話に耳を傾ける。二人はかなり親しげに見えた。楽しそうに会話をする姿を見つめていると、バチッと幸と目が合う。
途端に彼はこちらへ駆け寄ってきた。何故か幸はほんのりと頬を染め、その表情とは裏腹に俺は力強く腕を引かれる。その力強さに加えあまりに突然のことだった為、ガタガタと大きな音を立て椅子を倒してしまうが、彼はお構い無しに俺を引き摺り続ける。
「急になんだよ、待て待て」
必死の制止の言葉に耳を貸す様子が全く見られない。腹立たしい。聞く耳を持たない幸に呆れることしか出来ず、仕方無く俺は大人しく幸に引き摺られることにした。
ピタリと足が止まったのは先程の日和と呼ばれていた女子生徒の前。彼女の前まで連れてこられた理由はよく分からないが、幸の腕から解放されれば困惑しつつも、取り敢えず制服の乱れを直した。
近くで見ると想像していたよりも小柄に見える彼女は「初めまして」と笑顔で一言。深々と頭を下げられ、礼儀正しさに思わず釣られるように頭を下げた。
「こいつが叶! 俺の好きな人!」
「は? 何言って……」
突然のカミングアウトに驚きが隠せない。思わず腕に抱き着く幸を振り払った。が、慌てているのは俺だけのようで。あぁ、と彼女は手を叩いた。
「幸からよく話聞いてます。幸の幼馴染の
慣れた様子で淡々と自己紹介する雛橋に戸惑う。やはり幸の面食い具合は昔から変わっていないようだ。
叶かっこいいでしょ、と横で鼻息荒くらんらんと目を輝かせる幸に苦笑を漏らしつつも、頬をかきながら自己紹介。
「……倉間 叶です」
よろしく、とお互い一言。そして再び深々と頭を下げる。何なんだこの状況は。謎の状況に混乱し正常に脳が機能しない。楽しげに会話を進める幸と雛橋の横で、俺は考えることを放棄した。こいつらにはついていけない。
チャイムが鳴り響く。それにより飛びかけていた意識を取り戻せば、「授業始まんぞ」と幸の頭に手を乗せる。にんまりと嬉しげに笑んでみせ彼はうんうんと頷きを見せた。
私も戻らなきゃ、と焦りを見せた雛橋は「また今度」と可愛らしく俺らに手を振りパタパタと走り去って行った。
「幸にあんな可愛い幼馴染いたんだな」
「だめ! 叶には俺がいるでしょー!」
べたべたとまとわりつく幸を引き剥がし俺は席へと戻った。
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青猫(プロフ) - 全然待ちますよ!作者さんのペースで大丈夫です!( ´▽`) (2021年7月23日 14時) (レス) id: fe631de70d (このIDを非表示/違反報告)
はたらま(プロフ) - 青猫さん» 更新の度コメント下さり有難う御座います!更新が遅くて本当に申し訳御座いません。今後少しずつ更新頻度を上げていこうと思っておりますので、気長にお待ち頂けると幸いで御座います。 (2021年7月23日 13時) (レス) id: 99dee8af5b (このIDを非表示/違反報告)
青猫(プロフ) - 更新ありがとうございます! (2021年7月23日 11時) (レス) id: fe631de70d (このIDを非表示/違反報告)
はたらま(プロフ) - 青猫さん» 更新する度に青猫様からコメント頂けて更新の励みになっております。有難う御座います。あまりに遅い更新では御座いますが、今後もご愛読頂けると幸いです。 (2020年11月2日 23時) (レス) id: 99dee8af5b (このIDを非表示/違反報告)
青猫(プロフ) - 通知きたとき叫びました!w忙しい中更新ありがとうございます!(*´∀`) (2020年11月1日 17時) (レス) id: fe631de70d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:はたらま | 作成日時:2016年8月12日 11時