76. 東春秋と「策士」 ページ39
東side
――パァン。
手元のイーグレットが火を吹いた。
レーダー頼りでは直撃はしていないだろう、だがそれでいい。
恐らくお互いに足止めを命じられている。
最低限の相手をしていれば、向こうだって大きく逃げることはない。
スコープにチラリと金髪が映り込んだ。
(こっちが出水か。)
折紙と三輪が二人ずつ抑え、俺と出水は硬直状態。
一見互角に見えるが、恐らく先に落ちるのは三輪だろう。
「……ここからは俺が指揮を取ろう。」
三輪は指揮官としては優秀な部類で、目立ったミスもしていなかった。
それでも尚、戦況は刻一刻とあちらに有利に変わっていく。
折紙Aは想定以上の策士なようだ。
初めての団体戦、良い機会ではあるが流石に彼女の相手をさせるのは酷だろう。
「二宮と加古はバッグワームを起動、俺と一緒に出水を狩るぞ。
折紙も追ってくる可能性が高い。警戒しとけよ。」
《二宮、了解。》
《加古、了解。》
太刀川隊の作戦は折紙を囮にして、二人係りで三輪を討ち取ることだ。
だが、これで状況は一転。
三輪を囮にして、3人係で出水、もしくは折紙を狩る流れになる。
バッグワームで隠れた折紙の炙り出しと、出水の首を天秤にかけさせる。
太刀川隊の作戦を、そのまま乗っ取ったのだ。
あちらもそれに気づいたのだろう。
狭い路地の隙間で、バッグワームが翻るのが見えた。
ここで見逃してやるほど甘くは――……
「……！」
北方向への局所防御……？
なるほど、あくまでも出水は囮として扱うのか。
太刀川の話によれば、例の決闘はアイビスが決め手だったらしい。
あの太刀川に弾速の遅いアイビスを当てられるほど、彼女の射撃能力は上達している。
射線の通りずらい北さえガードできれば、出水を狙った俺をカウンタースナイプにかけるのは造作もないはず。
いや、祝辞会の時の折紙は射撃技術を隠し球として使いたいようだった。
ネタの割れてる俺に使う可能性は――……。
「二宮・加古ちょっと北側を回ってから来い。
出水に逃げられそうだ。」
三輪から指揮権を移したことで、俺は簡単に落ちるわけにはいかなくなった。
多分、居ないはず。恐らく、撃たないはず。そんな根拠では撃ちに行くことはできない。
「向こうが一枚上手だったか……。」
このまま、出水と折紙は合流する。
攻撃手として加古に勝る折紙、射手として出水に勝る二宮。
こちらが、互角の勝負になるのならカギを握るのは――……。
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origamisakura(プロフ) - ばぐさん» 連日ワートリの関連ランキングに載っていらっしゃる作者様に見て貰えているとは恐縮です！綺麗な文章だなんてとんでもない。お褒めいただいて嬉しいです。コメントありがとうございます！ (2020年12月9日 0時) (
レス) id: 6da1c3afc2 (このIDを非表示/違反報告)
ばぐ(プロフ) - コメント失礼します。とても綺麗な文章と素敵な展開に感動しました。更新楽しみにしています。頑張ってください！ (2020年12月8日 19時) (レス) id: a81a0b3a5c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：*佐倉照* | 作成日時：2020年12月3日 7時
