64. 結末 ページ27
私の会心の一撃は、どうやらタイムアップによって刺さり切らなかったらしい。
太刀川さんは、メテオラを無視してアイビスを集中シールド2枚で防ぐのを選択した。
普通ならシールドを重ねても私のトリオン量のアイビスは防げない。
しかし、メテオラの設置につぎ込んだ分と最後に両足を切り取られた分で、私のトリオンは限界を迎えていた。
余ったトリオンをかき集めて放ったアイビスの威力は普段のものより軽く、即死を防ぐことに成功したらしい。
アナウンスが鳴った時点で、太刀川さんはメテオラに巻き込まれて全身ズタボロ、トリオン漏出過多でいつベイルアウトしてもおかしくない状態だったそうだ。
本当にあと少し……。
あと2〜3秒戦闘時間が長ければ仕留められていたし、私がトリオンをもう少し温存していたらアイビスは防げなかった。
それでも――……
「私は、太刀川さんを倒せなかった……。」
落胆と激戦による精神的な疲労で、ベイルアウト用ベッドから起き上がれないまま、そう呟いた。
「けど、俺もお前を倒してないぞ。」
私がなかなかブースから出てこないから痺れを切らしたのだろう。
太刀川さんが私の顔を覗いた。
入り口の方に目を向けると、出水が立っていた。
「勝手に、賭けしろにしてごめん……。」
なんとなく気まずくて、こっちに向かってくる彼から目を逸らしてしまう。
「いや、その……。
俺こそ悪かったよ……。」
予想外に優しい声と、頭に乗せられた手の温度。
思えば、出水に撫でられるのは初めてかもしれない。
オキシトシンの分泌により異常加速する心音と、セロトニンの効果で広がる安心感。
柄にもなく褒めた頬の朱色は、だいたいドーパミンのせいだ。
親しい人間との接所によって生産されるホルモンの名前を連ねて、見えない何かに言い訳をする。
「……嵐山さんのが丁寧。」
「お前はそういうこと言うと思ったよ！！」
優しく触れていた彼の手が、ガシガシと私の髪を乱していく。
頭を揺られて少し痛い。
けれど、やっぱりこれくらいの方が出水らしい。
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origamisakura(プロフ) - ばぐさん» 連日ワートリの関連ランキングに載っていらっしゃる作者様に見て貰えているとは恐縮です！綺麗な文章だなんてとんでもない。お褒めいただいて嬉しいです。コメントありがとうございます！ (2020年12月9日 0時) (
レス) id: 6da1c3afc2 (このIDを非表示/違反報告)
ばぐ(プロフ) - コメント失礼します。とても綺麗な文章と素敵な展開に感動しました。更新楽しみにしています。頑張ってください！ (2020年12月8日 19時) (レス) id: a81a0b3a5c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：*佐倉照* | 作成日時：2020年12月3日 7時
