60. 出水公平と「懺悔」 ページ23
出水side
勘弁してくれ。
「お初お目にかかります、太刀川慶さん。」
初対面を迎える彼らをハラハラしながら眺める。
Aには3人で組むつもりだったことを言えていないし、太刀川さんには言えていないことを伝えていない。
俺が拗らせたおかげでこの二人の間にも妙なすれ違いが生まれてしまった。
だいたい全部俺のせいになるのは目に見えているので、どうにか気づかれないように話を進めたい。
「出水と隊を組む予定だそうで。」
「ああ、そうだな。(俺とお前と3人で)組む予定だ。」
あっぶねぇ……！
Aが他人事のように言うから、最速で太刀川さんにバレるところだった。
額を冷たい汗が伝う。
集中しろ、気を張っていれば乗り越えられない試練ではないはずだ。
「俺と交渉がしたいらしいな。」
「はい、交渉と言うよりは賭けになりますが。
出水の処遇について……。」
「あー、あのさ。」
や ば い 。
俺の処遇とかいう危なすぎる単語を聞いて思わず声を上げてしまう。
「？」
いや、これ……どうすればいいんだ。
太刀川さんもAも、俺が口を挟んだことを不思議がるのが先行してまだ食い違いには気づいていない。
何か、何か言わなければ怪しまれる。
そういえばさっきAは交渉ではなく賭けと言ったな、何をする気かはわからないがそんな前置きをするってことは、交渉では済まない事態になるって意味じゃないのか？
足りない頭をフル回転させて何とか出まかせを考えた。
「………………物騒な感じになったりしないよな。」
「どうだろう……？
だめそうなら出水が止めてよ」
当てずっぽうの俺の予想は的外れなものではなかったらしい。
とりあえずの窮地は脱した。
Aの奴はいつもこんなことをやってんのか。
そう油断した俺に、死角からデッドボールが放たれる。
「私と、決闘してください。」
結局、いつだって俺を振り回わすのはお前なんだ。
「おー、面白そうだな」なんて乗り気な太刀川さん。
彼はもう食い違いに気づいていて、自分が一言「3人で組もう」と言えば収まる状況であるのは理解している。
この一件の真相に近づいてなお何も言わずにいる太刀川に、もう勝手にしてくれと諦めを選択した。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 70人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ワールドトリガー」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
origamisakura(プロフ) - ばぐさん» 連日ワートリの関連ランキングに載っていらっしゃる作者様に見て貰えているとは恐縮です！綺麗な文章だなんてとんでもない。お褒めいただいて嬉しいです。コメントありがとうございます！ (2020年12月9日 0時) (
レス) id: 6da1c3afc2 (このIDを非表示/違反報告)
ばぐ(プロフ) - コメント失礼します。とても綺麗な文章と素敵な展開に感動しました。更新楽しみにしています。頑張ってください！ (2020年12月8日 19時) (レス) id: a81a0b3a5c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：*佐倉照* | 作成日時：2020年12月3日 7時
