56. 普通の策 ページ19
"それは、『嫉妬』ではないのか？"
"……ないですよ。"
嵐山さんの前ではああ言ったが、この感情はやはり嫉妬に近いものなのかもしれない。
と言うか嵐山さんと佐補ちゃんの例え話自体が嫉妬によるものではないのだろうか。
「料理上手が自慢の父親は、娘が三ツ星シェフの彼氏を連れてきたら快く受け入れると思う？」
「……帰れ。」
出水から衝撃の報告を受けて以来、初めての学校。
いつも彼と二人で昼食をとっていた屋上にはなんとなく行きずらくて、どうしようかと迷っていた時に彼は現れた。
先日押し付けた手作り弁当の箱を律義にも洗って返しに来た三輪秀次。
恐らくは一人で食事をしているであろう違うクラスの彼の元にお邪魔すると、「本当に邪魔だ」と言って歓迎してくれた。
「今更お前らのいざこざに俺を巻き込むな。」
「やっぱり、格上だと分かってる相手に奪われるのは納得いかないよね。」
三輪の主張と痛い視線など一切気にせず話を続ける。
そんなに嫌なら、勝手に彼の机に広げた私の昼食を床にでも落とせばいいのに。
恐らくこの前の手作り弁当も完食し、今回も物理的な抵抗を始めない彼は典型的な押しに弱いタイプなのだろう。
今回もこちらが引かないことを理解すれば、彼は口を開く。
「……そもそもお前は太刀川の事を、剣の腕以外では下だと評価したんだろ。
何故、それが格上の相手になる。」
そして、三輪の指摘は意外と核心をついてくることが多い。
そうだ今回問題なのはそこなのだ。
私は(多分)団体戦においては"タチカワさん"よりも優秀なのだ。
でも逆にそれは出水が私を選ばなかった理由は、個人技以外にないことになる。
つまり、これから出水の決定を覆すためには攻撃手1位を個人技で超えることを証明しなければいけない事になる。
そして、それは少なくとの今の私には不可能なことなのだ。
「出水よりもぜんぜん弱いシューターと組んでチームランク戦で叩き潰せば……。」
「何でお前はそういう方向にいくんだ。」
もっと普通の方法があるだろ。と言う三輪に、他に有効な作戦が見つからないでいる私は首をかしげる。
彼の中には他の策があるというのか？
他人を誘導操作することに特化した彼女の頭に、自分できっかけを作る選択肢は存在しない。
普通に私も加入させろと言いに行けばいい。その意見を飲み込んだ三輪は、代わりに溜息を吐いた。
「……お前を馬鹿だと思う日が来るとは思わなかった。」
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origamisakura(プロフ) - ばぐさん» 連日ワートリの関連ランキングに載っていらっしゃる作者様に見て貰えているとは恐縮です！綺麗な文章だなんてとんでもない。お褒めいただいて嬉しいです。コメントありがとうございます！ (2020年12月9日 0時) (
レス) id: 6da1c3afc2 (このIDを非表示/違反報告)
ばぐ(プロフ) - コメント失礼します。とても綺麗な文章と素敵な展開に感動しました。更新楽しみにしています。頑張ってください！ (2020年12月8日 19時) (レス) id: a81a0b3a5c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：*佐倉照* | 作成日時：2020年12月3日 7時
