55. 嵐山准と「聖人」 ページ18
嵐山side
「そこまで状況が特殊だと比較にならないな。」
先ほどの 例が余りにも極端なので、そう忠告すると彼女は何やら考え始めた。
「……嵐山さんって、柿崎さんが他の人の隊に移籍するってなったら嫌がります？」
「驚きはするだろうが、その時は
俺の答えは彼女を困らせるものだったらしい。
頭を抱えたAは、俺が『嫉妬』する方法を考えているらしい。
そしてついに、思いつかなかったのか「嵐山さんって本当に聖人ですよね」と、観念したように言った。
今この瞬間も、彼女の口から幼馴染の彼の名が出るたびに俺の感情が乱れていることなど彼女は知らない。
「――何で出水、あんなこと言ったんだろ……。」
独り言のように呟いたAの疑問には、俺も思うことがあった。
以前、幼馴染くんと会った時、彼はAに対して非常に好意的であるように見えた。
いつものように彼女の頭に手を乗せたときは顔を顰めていたし、俺の口説き文句が喝破された時は慣れたようにそれを眺めていた。
きっと、彼にも伝えたいことを伝えられなかった経験があったのだろう。
"――いやだ、それは応援できない。"
"……ああ、そうだろうな。"
その彼が、そんな嫌がらせのようなことを言うだろうか。
二人の間に何かしらのすれ違いが起こっている気がしたが、俺はそれを口には出さなかった。
一番大きい理由はどうせ彼女なら気付いているからだが、幾分かは俺の願望も混ざっている。
最も彼女の近くにいたであろう人物の争奪戦離脱が見えてたのをいいことに、利用しようと考えたのだ。
こんな俺は、彼女の言う『聖人』にはなれないだろう。
「Aは彼にどうして欲しいんだ？」
良からぬ考えなのを承知で話を進める。
元より彼女との溝を作ってしまったのは
「出水は、ずっと私に振り回されてればいいんですよ……。」
半分見えた落ちに落胆することもせずに、俺は進むのだ。
「……その役、俺じゃダメか？」
嘘が下手な俺では、彼女を騙すことは出来ない。
だからあくまでもこの笑顔と本心で、この鉄壁の少女を攻略しよう。
「そんな必死に、慰めなくても大丈夫ですよ。」
ただ、まだまだその道のりは遠そうだ。
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origamisakura(プロフ) - ばぐさん» 連日ワートリの関連ランキングに載っていらっしゃる作者様に見て貰えているとは恐縮です！綺麗な文章だなんてとんでもない。お褒めいただいて嬉しいです。コメントありがとうございます！ (2020年12月9日 0時) (
レス) id: 6da1c3afc2 (このIDを非表示/違反報告)
ばぐ(プロフ) - コメント失礼します。とても綺麗な文章と素敵な展開に感動しました。更新楽しみにしています。頑張ってください！ (2020年12月8日 19時) (レス) id: a81a0b3a5c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：*佐倉照* | 作成日時：2020年12月3日 7時
