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教えて、七海先生! ページ34

それから2日が経って、私はようやく高専に復帰した。
誰もいない階段を駆け上がる。
靴音が、木霊して私の耳に届く。
廊下まで行くと、教室の近くに人影が見えた。
それが誰のものかわかって、私は走り出す。
『おはようー!帰ってきたよー!』
「うおっ、A!びっくりしたぁ。おはよ」
悠仁。
ここ最近会えてなかった分、会えて嬉しい。
悠仁は私の顔を見て一瞬嬉しそうにしたけれど、その後悲しそうな顔をした。
「ごめん。俺がもっとちゃんとしてればAのこと救えたのに…」
『謝るのは駄目。いいって言ってるでしょ?私も生きてるし、悠仁も無事だったの。それでいいじゃん』
「A…」
悠仁の顔は少し明るくなった。
「ごめん、本当に」
『あっ、また謝った。もう』
「あはは」
やっぱり、悠仁とはこうやって笑っていたいな。
…返事、今しよう。
私達は、いつ死ぬかわからないんだから。
今を、大切にしないと。
『悠仁』
「ん、なに?」
悠仁は振り向いて笑ってくれた。
私はその笑顔を壊さないように言葉を選ぶ。
『あの、前のことの返事なんだけど…』
告白と言ってしまうのが少し嫌で、私は言葉を濁した。
『ごめんなさい。私の中では今までもこれからも、悠仁は大切な親友なの』
頭の重さから逃れるように顔を下げた。
今の悠仁の顔を、見たくない。
怖い。
悠仁が悲しい顔をしてるのを、見たくない。
「A」
悠仁の優しい声が、上から響いた。
「返事、ありがとう。嬉しい。Aの本当の気持ちが聞けてよかった」
思わず顔を上げた。
目の前には、優しい笑顔の悠仁がいた。
悲しみも苦しみもなくなった、純粋な笑顔。
「ありがとう。これからもよろしくな」
『これからも、私と友達でいてくれるの…?』
口から出てしまった不安に後悔した。
こんなこと聞いて、おかしいって思われたかな?
けれど悠仁は、そのままの笑顔でこう言ってくれた。
「応、当たり前だろ?」

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作者名:紗由紀 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/novel/sayukinopurofu/  
作成日時:2022年4月29日 21時

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