押してダメでも押してみろ【宮侑】

05.幼馴染み ページ5

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「わんちゃーん」

「おま、その呼び方ヤメロっての！」

「わん…⁉」




パタパタと駆け寄ってくるのはリベロを務める犬鳴シオン。




「シオンくーん」

「えっ、お2人どーゆう関係ですか⁉」

「頼まれてたの持ってきたけど…これで足りる？」

「おー、サンキュ」

「この期に及んで無視⁉」





ポケットから新品の指用のテーピングを出して
シオンくんに渡してやる。

隣で宮さんが「ねぇねぇ」と言いながら
服の裾をぐいぐい引っ張ってくるのを手で払うと、

分かりやすく落ち込まれた。





「…幼馴染みなんだよ。家が隣で。」

「おさ…⁉」

「昔な。今は一人暮らししてんだろ？」

「まあ大学の時からね」





宮さんの口がどんどんあんぐり開いていく。


…幼馴染みって、そんなに驚くことかなぁ。


私がバレーボール好きになったのは、
紛れもなくこのシオンくんの影響。

本当はコートに入ってプレーしてみたかったけど、
運動神経にも身長にも恵まれなかった。




「〜〜〜！俺！負けません！」

「うおっ、お前いきなりでっかい声出すなよ！」

「ん？何に？」




宮さんが突如右手を高くあげて叫んだ。

衝撃で松葉杖が手から離れて倒れる。


あっ、コノヤロ丁寧に扱いなさいよ。




「"幼馴染み"なんてカテゴリ、俺がぶっ壊してみせますから！」

「何言ってんのお前？」

「カテゴリぶっ壊すのは無理じゃないかなぁ」





意味不明なことを叫ぶ宮さんを、
シオンくんも呆れた顔で見守っている。





「Aさん俺にもテーピングちょうだい！」

「せーい」

「ぶべらっ」




テーピングを要求されたので、
ポケットに入っていた最後の一個を投げて寄越すと、


照準狂って宮さんの顔面にヒットした。






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