「「「(報われない)」」」 ページ7
毎年恒例となりつつある、この幻海師範宅での年末の飲み会は、普段なかなか顔を合わせられない縁の深い面子が勢揃いする。そんな貴重な日。
そんな全員集合が決まった貴重な本日に。
幽助の口から、螢子との結婚が決まったと、みんなに報告があった。
幽助が。
結婚をすると。
「幽助…」
よかったね、おめでとう、式いつ?てかなんで私には先に言わないのよ、一番長い付き合いでしょ、言っときなさいよバカ、馬鹿幽助、螢子を泣かしたら許さないからね。
祝福が飛び交う中、私はそう言った。言ったと思う。正直あんまり覚えていない。
その後はあの宴会に突入した。幽助から離れた場所に座るつもりだったのに、あのおバカはこんな時に限って昔のようにひっついて来て、気が付いたら宴会が始まっていた。
蔵馬とは離れた席だった。しんどかった。
「ゆうすけ…」
迷ってやめたけど、やっぱりアルコール類に手を伸ばすべきだったのかもしれない。
そしたらあの時酎にだって。
笑って「何それウケる」って、返せたのかな。
「ほら、あんまり泣いてると目が溶けますよ」
「いい、もう、何も、見たくない」
「それは困るなぁ。俺、貴女の目、綺麗で結構好きなのに」
「いらない」
「A…」
「ゆう、すけ…」
「…好きですよ」
一際強く抱きしめられて、蔵馬が最後に何と言ったのか、よく聞こえなかった。
自分の泣き声が頭の中で反響する。その内横隔膜も痙攣を始めてしまって、宴会だというのにただの一口も固形物が喉を通らなかった胃に流し続けた水分が、今になって気持ち悪さを運んでくる。
何も見えないし、聞こえない。
見たくないし、聞きたくない。
そんな、どうしようもない状態。
だから。
幽助が立ち竦んでいたそこに凍矢が立っていたことも。
蔵馬が、私を抱きしめながら凍矢に冷たい視線を送っていたことも。
私が気取る由はなかった。
その瞳には映らない。
end
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作者名:uru | 作成日時:2020年5月18日 0時