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「(これだから酔っ払いは)」 ページ2

「………え?は?何言ってんの?」

平静を装おうとしたが故に、返事に数秒を要してしまった。ドクドクドク。一切酔いの成分を摂取してはいないのに、呑んだ時のように脈拍の上がり具合が著しい。いや呑んだことないからどうだか知らないけど。

「そんなことよりっ、A、手!」
「大丈夫か、切れてるぞっ」
「あ、ごめん、中身溢しちゃって。雑巾ぞうきん」
「「違う!」」

私の隣にいる蔵馬と、その隣に座る凍矢が慌てて何か言っている、けど。正直頭に入ってきやしない。

ちらりと視線だけ動かして、ぎゃあぎゃあと煩い輪の中心を見る。私が席を立つ前と変わりない間抜け面がいた。聞いてないな、よろしい。あんたはそのまま腕相撲しとけ。

「なんなのいきなり…」

中身をぶちまけたテーブルを拭かなければ。この廃棄物と化したアルミ缶も処分しに行かなければ。冷静な頭の中の自分が言う。ついでに「死んでも誤魔化せ」とも。
でも実際には、しかめっ面で正面の酎を睨んでいる。それしか出来ていない。

「あー、いや、だからよぉ」
「酎」

普段よりも幾分低いトゲを含んだ声音で、蔵馬が酎のその先を塞き止めた。
いつ取りに行ったのか、その手にした布巾で濡れた卓上を拭っている。さすがだよ、出来る男は違うね。

「早く手当てした方がいい」

握り締めたままだったアルミの残骸を、ゆっくり指を解いて取り去っていったのは凍矢だ。
ここにきて、ようやく手の痛みを認知する。何このバッキバキの缶、何この手の切り傷。めちゃめちゃ痛いんだけど。誰がやったんだよ。私だよ。

「ごめん、二人とも。そうだね、絆創膏貼ってくる」

ふらりと立ち上がって、蔵馬と凍矢に声をかけた。酎は無視しといた。
室内は変わらず宴会ムードなのに、私達の場所だけ妙な空気になってしまった。

誰のせいだよ。そうだよ私だよ!

「ちょっと失礼」

気遣わしげな二人の視線が刺さるように痛い。それから逃げ去るように、私は宴会場から抜け出した。なるべく笑顔を作ったつもりだけど、ちゃんと笑えてたかわからないや。

「(本命以外にモテても意味ないんですけど)」→←「(酒を薄めておくべきでした)」



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作者名:uru | 作成日時:2020年5月18日 0時

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