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仕事を終え、
誰もいない家に戻ってすぐ、
釣具を持って家を出る。
ネットカフェで一夜を過ごして、
朝市で旬の魚を買って、
クーラーボックスに入れる。
家に帰ると
いつも通りの妻が
出勤の支度をしていて、
ホッとした。
俺の勘なんて
当てにならないな。
───そう思ってから、
どのくらいだろう。
その日は来た。
俺が先に帰宅した。
妻からの連絡は特にない。
けれど、
珍しいことではなかった。
仕事で何かあるとたまに、
やけ酒して帰ることがある。
○○「ただいま。」
妻を見た瞬間、
くすぶっていた嫌な予感に、
日常が音をたてて崩れ落ちる。
下ろした髪を見て、
『抱かれてきた。』
そう思った。
ジュン「お帰り。
遅かったね。残業?」
動揺して思わず、
そんなことを口走った。
『また飲んで来たの?』
そう言って笑えよ。
───何やってんだ。
○○「ううん、
なんとなく寄り道してきた。」
疑惑が確信に変わるような、
妻の返事。
ソファーから
ようやく立ち上がって、
妻に近づき抱き締めた。
酒の匂いがしない。
・・・家のシャンプーの匂い。
シャワーもしないで、
抱かれたのか。
前もって
抱かれる予定だった
んじゃなくて、
きっと突然、唐突に。
ただ
その日が今日だった。
ジュン「何か、
嫌なことでもあった?」
妻が俺に失望しないように、
心がここに帰るように、
気持ち悪いほどの
優しさで妻を包む。
離れないで。
許すから。
○○「・・・ううん、
大丈夫。」
この会話が日常ではないことに
疑問を持つ余裕すらない妻に、
スッと心が冷静になる。
───まだ、大丈夫だ。
妻は俺の手の中にいる。
膝を屈めて鞄を床に置き、
俺の背中に手を回す妻。
頬を撫でて、唇を重ねる。
そのままソファーへと
妻の体を誘導して、
馬乗りになり、抱く。
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作者名:クムシラコネルミ | 作成日時:2020年7月13日 9時