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骨董屋で買った兎の陶器人形は玄関先に飾った。リビングに戻ると、ジョングクが小箱を眺めながらつんつんしていた。
「それね、骨董屋の店主のお孫さんがくれたの。セイレーンの歌声に似せたオルゴールだって」
「へぇ。……あ、だからか!なーんだ、えへへへ」
「え、何なに」
隣に座った私に思い切りもたれかかってくる。しかもデレデレ笑いながら。急に何、という気持ちもあるが、重くて苦しいので早く退いてほしい。
ぐいぐい押し返すとやめてくれた。顔は変わらずデレデレと夏場のアイスくらい溶けているけど。
「急に何なのよ……」
「僕の問題だしたった今解決したから大丈夫!それよりこれ、聞いてみよう!」
そう言うと、ぱかっとそれを開いたジョングク。するとどうだろう。
「……すごい」
決して音は多くない。なのにとても引き込まれる音色だった。なるほど、これはついつい誘惑されてしまうなと納得していると
「……――――♪」
ジョングクがその音色に自身の歌声を重ねた。目を閉じて何かを探るように歌う姿は、何というか神々しい。歌女神の加護があるからかな。そう考えていると、瞼が開いて澄んだ黒曜の瞳に私が映り込む。見つめていたのがバレたのが恥ずかしくて逸らそうとする。できなかった。
笑ったから。歌いながら、その瞳に私だけを映して。その光景とか、この歌声を独り占めしてるんだって事実で、頭のてっぺんまで満たされた私は彼から目を逸らせなかった。
はっと我に返ったのは、小箱が閉じてジョングクの歌声と同時に止んだ時。
「ずいぶん聴き惚れてたね」
くすくす悪戯気に笑うがずるくて愛しくて、たまらず抱き着いた。
「うわっ……!?ちょ、何、なに」
「うん、聴き惚れてた。知っていたの?この歌」
「いや、初めて」
「えっ」
「何となく合わせてみた。Aのお気に召したら幸いデス」
「えぇっ、すごい、すごいわね!」
抱き着いたまま褒めちぎると照れた顔で私の頭を撫でてくれた。
「ユンギヒョン、まさかとは思うけど僕の彼女口説いてないよね?」
「なわけねーだろ。……てか、加護が移るほど一緒にいんの?ぞっこんじゃん」
「はい!いいでしょう?」
「はいはいよかったね」
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レオレ〇●〇(プロフ) - 鹿さん» 多くの加護を持つ英雄に対する一種の信頼のようなものだと思っていただければ…淡白すぎますけどね😂(返信遅れて申し訳ないです) (8月13日 0時) (レス) id: fcfeecadee (このIDを非表示/違反報告)
鹿(プロフ) - 主人公飛んでった英雄に対して淡白www (7月28日 22時) (レス) @page9 id: ff43409288 (このIDを非表示/違反報告)
レオレ〇●〇(プロフ) - 鹿さん» コメントありがとうございます!英雄様のかっこいいところもそのうちお見せできると思いますので、楽しみにしていただけると嬉しいです! (7月26日 7時) (レス) id: fcfeecadee (このIDを非表示/違反報告)
鹿(プロフ) - 英雄まじで可愛い!! (7月26日 2時) (レス) @page4 id: ff43409288 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:レオレ〇●〇 | 作成日時:2023年7月24日 16時