❤️どうしても君がいい ページ10
何もかも手に入れたし、何もかも手に入ると思ってた。あの人に会うまでは。
「ホバ、移動だって」
「あ、もうそんな時間？」
どうやら練習に集中しすぎていたらしい。慌ててシャツを着替えてると、扉に寄りかかっているナムジュナが困ったように笑った。
「またあの人のこと考えてた？」
「まぁな」
「めずらしい。ホバがそこまで執着するの」
「そんくらい必死なんだよ、わかってるだろ」
「わかってるよ。ファイティン、ホバ」
「ん、ありがとう」
ぽんと肩を叩かれたから、ぽんぽんと背中を叩き返した。
ナムジュナの言うことは最もだ。俺は苦手なものとか無理そうなものがあっても、やれるだけやってみるタイプ。だけどやれるだけやっても無理なら切り捨てて切り替えられるようにもしている。人間誰にだって限界はあるもんだからね。無理な目標に費やす時間だってもったいない。そんなことするくらいならダンスの練習をしていたいってもんだ。
そんな俺のスタンスを崩したのは誰かって話だよね。その前にひとつ。アイドルだけど俺も立派な男の子だ。
「ご指名ありがとうございます。……あら」
「やぁ、こんばんは」
シン・A。この高級クラブのNO.1キャスト。そして、俺が惚れ込んでいる人。
このクラブは全個室で全防音。その代わり死角がないレベルで防犯カメラが設置されている。ま、こんなところで大事起こす奴もいないだろうけどね。
「お忙しいでしょう？」
「ありがたいことにね。今日もさっきまで仕事だった」
「まぁ、それなのに来てくださったの？ふふ、嬉しい」
朱を乗せた唇が魅惑的な弧を描く。それにまたドキリとしながらカクテルを煽る。
「あら、また可愛らしいものを飲んでらしてるの？」
「お酒はあんまり得意じゃないからね」
「それなのにほぼ毎日来てくださるなんて……シャンパンも入れてくださるし。何でですの？」
「わかってて言わせるの？」
グラスを置いて彼女を見る。瞼に置かれた大粒のグリッターが照明を反射する。
本当はもっと近づいて手を握って、唇が触れそうなくらいの距離で甘い言葉を囁きたい。でもそんな俺じゃ、“アイドル”で培った俺じゃなくて、ただの一人の人間として、チョン・ホソクとして話したい。
「A。君が好き。だからこうしてほぼ毎日会いに来てる。好きな人に毎日会いたいって思うのは何も不思議なことじゃないでしょ？」
ーーー
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作者名：レオレ〇●〇 | 作成日時：2023年6月16日 16時
