💚大罪 ページ9
カシャ、カシャ。シャッターを切る音がスタジオ内に響く。他に聞こえる音といえば、エアコンの音と自分の呼吸音、それから目の前の女性の唸り声。
「うーん、何か足りないのよね」
「……まだ、だめ？」
「テヒョンアだけの問題じゃないから安心して？」
僕に微笑んでからまたモニターとにらめっこを始めたから、セットから抜け出して僕も一緒に覗き込む。
事の発端はこの人――カン・Aが、僕に被写体として自身の作品に参加してほしいと頼み込んできたこと。
写真家である彼女は、風景だろうが人物だろうが被写体の持っている魅力を200％引き出すセンスと才能の持ち主と謳われ、世界中から注目されている。そんなすごい人からの依頼、事務所が断ったとしても絶対に受けた。
まぁただ、制作過程は独特で。山の中にある彼女のアトリエで被写体と二人きりで過ごしながら写真を撮っていくらしい。僕も事務所もスキャンダルを心配したけど、あとでドキュメンタリーにするために防犯カメラを設置しまくってると説明された。
僕とAヌナが山籠もりを始めて三日目になるけど、本人の納得いくものは撮れていないみたいだ。
「こっちじゃなくてこう光を……違うなそれだと……」
「えー、いいと思うけどな」
「うわっびっくりした！」
背後から突然声を出したせいか目を丸くするヌナ。くすくす笑っていると困ったような笑みが返ってきた。
「ごめんねぇテヒョンア。本当はもっとさくさく撮れるはずだったんだけど、ちょっと調子悪いみたいだ」
「そうなの？僕、昨日撮ったやつ好きだよ」
「あはは、ありがとう。でもね、あれは多分テヒョンアの100％なの。私はもっと、もっとテヒョンアの魅力を引き出したいな。この“七つの大罪”のうちの“嫉妬”のコンセプトでね」
Aヌナの視線が机が見えなくなるほどの大量の絵コンテに向いた。被写体を僕に決める前から、僕がここに来てからもどんどん枚数を増やしていたそれが、彼女の情熱を何より表していた。
「とりあえず撮るしかないかぁ。いつかいいアイデアも降りてきそうだし」
「Aヌナ、ずっとそれ言ってるね」
「やかまし！」
思わず笑いながらセットに戻る。
カシャ、とシャッター音が響く空間になって数分。Aヌナが口を開いた。
「テヒョンア。嫉妬したことある？」
「え？」
ーーー
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作者名：レオレ〇●〇 | 作成日時：2023年6月16日 16時
