ばんたん短編集 (ページ5)

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💙Don't tell me bye,bye ページ5

限界だった。いつから？それさえわからない。
ただ、走ってきた。息が切れたって走り続けた。でも僕は人間だった。息もしないまま走ることなんてできなかった。

「ジュナ、おはよう」
「……んん」
「あら、今朝は甘えんぼうなのね」

俺の頬に触れる滑らかな手。擦り寄ってみるとくふくふと笑い声が降ってきた。
俺は今、恋人であるAの元にいる。韓国屈指の起業家である彼女の別荘はとても静かな森の中にあった。
付き合って5年ほど経つが、彼女がここに連れてきてくれたのは初めてで。というか別荘があること自体教えてくれなかった。それを言ったら「だって聞かれてないもの」と笑われたが。

「起きて、じきにお昼になっちゃうよ」
「……もうそんな時間？」
「あらっ、誰のせい？あなたが起き抜けに、んむ」
「それ以上言わないで。またオオカミになっちゃう」
「…………もう」

眉を下げて困ったように笑うAが可愛い。
懲りずにもう一度ベッドに連れ込もうとすると、ぺちんと唇をはたかれた。

「ん゛っ」
「調子に乗らない。パンケーキが冷めちゃうでしょ」

むっとした顔で眉間にしわを寄せているA。この顔、これ以上押すとしばらく機嫌を損ねてしまうやつだ。
大人しくベッドから出てその辺に投げてあったシャツを着た。

「Aのパンケーキはやっぱり美味しいね。ずっと食べてたい」
「ほんと？ふふ、嬉しいわ」

もくもくと頬張るその口にクリームが付いてたから、指ですくって舐め取る。するとぽわっと顔を赤くするA。かわいくて愛おしくてたまらなくなる。

(そういえばテヒョンアもよく、)

そう考えた思考をぶつりと切断する。……考えないようにしてたのに。

「……ジュナ、メンバーのこと考えてるわね？」
「！あぁいや、そんなわけじゃ」

Aが俺をここに連れてくるにあたって条件を出していたのを思い出した。『仕事のこと、メンバーのこと、アミのこと、RMである芸能人としてのキム・ナムジュンを忘れること』。でも残念ながら俺は――今もそうだけど、正直ここにいた5日間の間にメンバーやアミのことを考えない日なんてなかった。

「ジュナ」

カチャ、とカトラリーと皿が触れ合う音。いつの間にか下がっていた視線を上げると、困ったような笑顔のAと目が合う。

「私、あなたに逃げてほしくてここに連れてきたの」

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