💜お前が腹筋をチラ見するとき、彼もまた ページ26
隣に越してきた大学生はボクシングを習ってるらしい。
「あ……おはようございます……」
「おはよーござ
早っ」
もう見えなくなってるし。
人見知りらしくて、あんまり話したことはないんだけど。
「顔いいんだよなぁ……」
ぱっちりした目と形のいい唇、と整った顔をしている。
こんな可愛い顔してるのにボクシングかぁ、と中庭でサンドバッグを叩いてる彼を眺める。
このマンション――そんな大層なもんじゃない、アパートか――には住民用の中庭みたいなのがある。
何故かそこにずっとサンドバッグがあって、誰が使うんだとずっと思ってた。
『最近入ってきたチョンくんさ、ここに入居するって決めた決め手があれだったらしいよ。普通に考えたらないもんねぇ、買おうとも思わないし』
この前ホソクさんと立ち話した時に聞いた話を思い出した。てか彼もチョンさんだな。
「おっと」
用事に遅れてしまう。ベランダから眺めてる場合じゃないわ。
いそいそと支度をして家を出る。
中庭を通過する時、チョンくんが真剣にサンドバッグに向き合っているのをちらりと見る。
ぶかぶかなシャツを着ているせいで、拳を打ち込んだ時にひらめいて――
(っし、今日の腹筋ノルマ達成)
私は筋肉フェチだと思う。そして彼はいい顔に加えていい腹筋をしているのである。
夏場は汗で張り付いて浮き出てるし、ウエストが合わないズボンの時もあるのかたまにパンツがチラ見えして……むふっ。
いやいや変態じゃないよ。誰にも言ってないし彼は知る由もないから不快な思いもさせてないだろうし。
「おっとっと、おっとっと」
マジで遅れる、見とれてる場合じゃない。
今日もいい腹筋ありがとね！と心の中で感謝しながら、友達との待ち合わせに急いだ。
「………………」
定期的に開催してる友達との飲み会。今日はなんと結婚するとの報告を受けて、祝い酒だとつい飲みすぎた。
コンビニで買った水のペットボトルを指に引っ掛けてぷらぷらさせながら歩いてると、
「あ……お、おかえりなさい」
「おや」
チョンくんがまだサンドバッグの前にいた。こんな時間まで頑張ってたのか。
「偉い偉いね〜」
「ちょ…………ぅう、ん」
わっしわしと頭を撫でる。汗でベタついた黒髪も何だか愛おしい。
ーーー
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作者名：レオレ〇●〇 | 作成日時：2023年6月16日 16時
