ばんたん短編集 (ページ17)

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🖤霊媒体質ゆんぎさん ※捏造フルコンボページ17

昔からそういうのには過敏だったと思う。曲のネタになるからって人の観察はよくするし。まぁその影響で自分が傷つきやすかった時期もあるけど、今回はそういうのじゃなくて。
夕方に差し掛かる時間帯、古い木の扉を開けると軋む音と一緒にカランコロンと鈴が鳴る。

「いらっしゃいませ〜。おや、お久しぶりです」
「……アイスアメリカーノ。塩たっぷりで」
「はぁい」

上京した頃から通ってる和風料理の喫茶店。そこの裏メニューに“塩”が存在する。それが意味するのはお祓い――取り憑いてる悪い霊とかを払ってくれるってやつだ。
若くして店長をやってるAは日本の呪術使いの血を引いてるみたいで、そっち界隈での評判もいい。
着物の裾を留めてる紐を解くと、俺の座ってる席へとやってきた。赤い太ぶちメガネに囲まれた瞳がじいっと見開かれ、品定めするように俺の周りを視る。一応店の中を見渡すと他に客はいなかった。

「ほぉ〜？こりゃまたいっぱい連れてきましたねぇ」
「何でもいいよ、早くやって……」
「はぁい。ではでは」

Aは着物の袖から符と石を取り出す。符を俺の額に貼り付けて石をからころと鳴らしながら手を回す。そして、符越しに俺の額に人差し指を突きつけて

『急急如律令』

そう日本語らしき言葉を唱えると、重かった体が羽でも生えたかのように軽くなった。ふぅ、とため息を吐く。

「ありがとう、すげぇ楽になったよ」
「それはよかったです。最近来ないと思ったらとんでもない数を引き連れてたのでびっくりしましたよ」
「あ、やっぱり？」

俺はどうやら霊媒体質ってやつみたいで、何もしなくてもそういうのを寄せ付けてしまうらしい。俺自身は見えるわけじゃないから、何となく嫌な予感がするとかぞわぞわするとかそんな感じだから対処もできない。
何か怪しいアクセサリーとか買うのも嫌だったし、とりあえずの抵抗として水晶のストラップを持っていたらそれが逆効果だってめっちゃ怒られたな。

『割と勘違いされがちなんですよ、弱い魔除けは逆に引き寄せやすいんです。魔除けをするような“何か”を持っている人だと思われてしまうから』

真面目な顔で淡々と叱ってくるAを思い出して笑みを零す。あれももう何年も前の話かぁ。

「なーに笑ってるんですか」

呆れた声に顔を上げるとアメリカーノを持ったAが。

「あぁ、初めて会った時を思い出してた」

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