ばんたん短編集 (ページ16)

今日:11 hit、昨日:6 hit、合計:10,598 hit

💛アポ取って！？ページ16

ピンポーン、とチャイムが鳴る。
宅配かな、と思ってインターホンを見ると

『こんにちはぁっ』
「……は？」

海の向こうにいるはずの恋人がにこにこ笑顔でそこにいた。

「ぱぼ！！」
「！？」

玄関のロックを解除して入ってきてもらう。ガチャンとオートロックの音がした瞬間に、染めたばかりらしいピンク頭を引っぱたいた。
目を見開いて私を見るジミンの頭を肩に押し付けるようにして抱きしめる。

「会う時はちゃんと会社の人とも段取り考えなきゃって言ってたでしょ？」
「ミアネ……だけどぉ、ヌナに会いたい、かったから。会社の人に、嘘ちゅいた」
「はぁ……もう、」

きゅんとしてしまった心に嘘はつけない。首元に擦り寄ってくるジミンを甘やかすように撫でた。

しばらくそのままでいたけど、紅茶の定期便が届いたからジミンをバスルームに押し込んでそれだけ受け取った。
今は二人でソファに座りながらその紅茶を嗜んでいる。

「んー、おいし」
「それはよかった」
「んへへへ」

すりすりと肩に頬を寄せるこの可愛い生物。あー、帰したくない。

「ジミナ、いつまで日本いれるの？」
「明日。あさっては、仕事あるから」
「そっか」

弾丸にしては長いと思ったけど、そのくらいのオフじゃないと来れないか。

「Aヌナ、お願いあります」
「何なに？」
「今日のご飯は、ヌナのちゅくったご飯がいいです」
「わかった。お肉料理いっぱい作るね」

ちょうど作り置きしようと思ってたから材料はわりとある。ジミンと付き合ってから頑張って自炊するようになったおかげだ。
これとあれがあるからあれ作って～、と脳内でシミュレートしていると持っていたカップを奪われた。頭に浮かんだハテナが消えないうちに体が倒れる。

「……ジミナ。こら、ジミナ」
「二か月……二か月も会ってなかったよ、Aヌナ」

ぞくっ。背筋から指先へと電気に似た何かが走った。あ、やばいこれ。
ばさっと髪をかきあげて、ちょっと目を細めて、唇をぺろりと湿したジミンはゆっくりと私の首に指を這わせる。せめて“つ”で嚙んでればからかう余地もあったのに……！

「僕は毎日会いたい。毎日ヌナのご飯食べたい。毎日ヌナに触れたい」
「じ、みっ」
「Aヌナ。僕と来ませんか」

現実的なことを考えたらNOでしかない。でも、私の願いを彼も全て口にしてしまったのならば。答えなんてもう――――。

ーーー
アポなしで凸ってくるじみんが書きたかっただけ。