ばんたん短編集 (ページ15)

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💚ごはんは大事 ※捏造過多注意ページ15

最初の違和感はちょっと厚めじゃない？と思ったメイク。
次の違和感は共演の度に右手にグローブ付いてない？と思ったこと。
確信したのは、彼女の出てるMVは絶対右手が映らないかグローブをはめていたこと。
だからこうなるのも必然だったかもね。

「て、ひょ、さ……」
「無理に話さないで。水は飲める？」

生放送の音楽番組のリハーサル中。気になって彼女のグループのリハ光景を見学していた僕は、ステージを降りた瞬間にぐらついた彼女に駆け寄ってその体を抱きとめた。そのままゆっくりしゃがんで、僕の足の上で横抱きにする体勢にすると、彼女のメンバーたちが水やタオルを持ってきてくれた。

「Aっ、A……！」
「落ち着いて！意識はあるみたいだから……！」
「テヒョンさん、ありがとうございます」
「ううん。水、少しずつあげた方がいいかも」

ほんのわずかに開いてる唇に少しずつ水を注いでくと、その度に喉が動いた。よかった、水分は取れるみたいだ。
オンニ、Aオンニ、と泣きながら彼女を呼んでる子にどこか懐かしさを覚えながら、救急車が到着するのを待つ。

「テヒョンさん、リハーサル」
「僕らもう終わってるから大丈夫。それよりこんな状態じゃ無理だ、もう一回リハし直せるようにお願いし」

ぎゅう、と弱々しく服を掴まれる感覚があった。犯人と思しきAちゃんは瞼をうっすら開けて僕を精一杯睨みつけていた。

「何？大先輩に意見するの？」

冗談交じりに言ったけどAちゃんのメンバーの子にはざわつかれた。演技、やりすぎたかな。
当のAちゃんはというと未だに睨んで口を動かしてる。聞き取ってあげたくて口元に耳を寄せると

「でき、ます…………から、よけい、なこと……しないで」

なんて生意気な後輩なんだろう。立てるかどうかも怪しいのにそんなこと言えちゃうんだ。
…………だからこそ、だろうな。

「ダメ、ちゃんと救急車に運ばれて。先輩命令だよ」
「じむしょ、ちがうじゃん」
「また生意気言って」

メンバーの子たちがはらはらした顔で僕らのやり取りを見守っている。仕方ない。

「じゃあ、憧れのオッパからの命令ってことにして」
「…………え、あっ」
「それなら聞けるでしょ？」

ん？と首を傾げて見つめれば観念したように目を伏せたAちゃん。よしよしと思ったところで救急隊が到着した。

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