ばんたん短編集 (ページ20)

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💛妹に旦那と子どもができた話ページ20

「あのね、子どもが産まれたの。可愛い女の子なんだよ」
「………………はへ？」

カラン、とグラスの中の氷が音を立てた。
韓国でダンサーやってる妹と3年ぶりに会った。たまたま帰省してた私は常連しか来ない地元のカフェで彼女と待ち合わせ。お互い他愛ない話をして、頼んだドリンクが半分くらい減ったところで冒頭の発言。

「ちょっと待て？わし、結婚したことさえ聞いてない」
「言ってないもん」
「そういう問題じゃねぇの。ともあれおめでとう。あ、お相手どんな人？今どこいんの、それと姪っ子ちゃんは今いずこに」
「思ったより受け入れるのが早くてびっくりしてるんだけど」

けらけら笑って椅子から転げ落ちそうになるのは変わってないらしい。

「だってもう婚姻届出して子どもまでいるんでしょ？じゃあもう反対の余地ないじゃん」
「そうだけど。姉ちゃん、超シスコンじゃん」

ぐうの音も出ねぇ。確かに私ゃヤバいくらいのシスコンだ。恋人が出来たとなりゃ徹底的にリサーチするし、妹を虐めた女がいりゃ徹底的にしばく。あ、勿論密かに。
だからといって、

「おまえが選んだ幸せにケチをつけるほどじゃないよ」

そう言ってバタートーストを頬張りながらインスタの通知を開く。すると、

『ごめん、遅れた』
『オッパ。大丈夫だよ』

韓国語ぽい発音で男性の声がした。会わせたい人がいるって旦那のことだったかぁ、と顔を上げると

「……ま？」
「はじめましてぇ、Aの夫の、パクジミンです」

一方的に見たことある顔がいた。グラサンくらいしか変装してないからいくら田舎といえど大丈夫か？という心配がまず来た。というかまだ現実を受け止めきれてないんだろうなわしの脳。
と、ここまで0.1秒。すかさず脳を通常運転に戻して立ち上がって挨拶、Aの隣の席を指さすとペコペコ頭を下げながら座った。マジで謙虚だなこの人。

『お姉さん、いい人だね』
『そう言ってくれて嬉しい』

秒でイチャつき始めた。韓国の夫婦ってそんな感じなんか？
薄くなったアイスコーヒーを啜りながら二人を観察する。新婚というには落ち着きすぎてる雰囲気を感じた。

「ちょいとごめんです。質問いい？」
「は、はい」
「お二人が結婚したのはいつ？というか交際何日婚なの？」
「え、えっとぉ」
「姉ちゃん、早口すぎ！」
「ごめん」

口元が暴走してしまうのは仕方ない。だって計算がおかしいのだ。

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