俺の専属マネージャー。

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必死の顔してる。


どうしたんだろ？


「・・・渋谷さん？」


顔を覗き込んだら、
渋田さんが我に返った。

なのに、掴んだ手はそのまま。

さらに力がこもった気がする。


「相手の男、ちゃんとしたヤツやろな。
やなかったら、すぐにでも・・・」


「別れろって言うんですか？」


「そうや」


あっさりうなづくから、
本気で驚いた。


掴まれた手首が痛い。


すごく華奢なのに、やっぱり男の人の力だ。


「なんでそんなことまで、
渋谷さんに決められなきゃなんないんですか？
私が誰と付き合おうと、
渋谷さんに関係ありません。
離して下さい」


私の言葉に渋谷さんの方が傷付いた顔するの、ずるい。

意味、分かんない。


「ごめん・・・」


渋谷さんが呟いた時、
通路の向こうから、


「渋やん、メイクさん呼んでるでぇ」


安田さんの明るい声が聞こえてきた。


もう、カラフルな衣装に着替えてて、
こっちに駆け寄って来る姿は、
アイドルそのもの。


「分かった！すぐ行く」


渋谷さんが駆け出して行くのを、
安田さんと二人で見送る。


「・・・Aちゃん、大丈夫？
泣いてないか、心配やってん。
渋やんもな、悪気があるわけちゃうと思うねん。
誰より仕事に対して真剣やし、
ストイックやからさ・・・」


「渋谷さんのせいじゃありません。
私が悪いから・・・」


「Aちゃん、辞めへんよな？
俺、それが心配で・・・
現場マネの仕事きついから、
なかなか長く続く子ぉ、おらんねん。
Aちゃんは気もきくし、
明るくて俺らも元気になれるし、
俺は・・・
ずっと一緒にやっていきたいなあって思うから」


一緒にやっていきたいって言葉に、
目の奥が熱くなる。


安田さんは、
いつも私に居場所を与えてくれる。


「はい」


うなづいたら、
安田さんが可愛い前歯をのぞかせて、笑った。


「失敗すんのは最初は誰でもしゃあないやんか。
俺なんて失敗なんか星の数超えて、
砂の数ぐらいこなしたし」


ちょっと得意そうに言うんだけど・・・


「失敗、こなす？」


安田さん語録が始まったかも。


時々、言葉の使い方が間違えてたり、
独特なの。


「ああ、失敗はこなしたらあかんか。
失敗からの生還をこなしてきてん」


その言い方もどこかおかしいけど、
もう訂正はしなかった。


安田さんの笑顔は本当に優しくて、
あたたかくて。

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