・ ページ22
*
最悪だ・・・
あらきさんにもめいちゃんにも迷惑掛けて
おまけにそこで泣くなんて
大人になって人前で泣いたことなんて記憶の限りない
なのに・・・・・・
どうしても止められなくて
「あらきさん、席変わってもらえますか」
静かななるせの声がして、あらきさんが立ち上がり、なるせが横に座ったのを感じた
その瞬間、ぎゅっと頭を抱えられるように抱き締められていた
大好きな人に抱き締められているのに嬉しくない
「離して・・・」と胸を押して離れようとした
「ごめん、無理」
「私も無理」
「思ったこと全部言って?」
「いい、もういい・・・大丈夫」
「全然大丈夫じゃない」
離れようと押しても離れないし、私もなるせも折れないから凄まじい緊張感の沈黙が流れた
『あのー・・・』
その沈黙を破ったのはめいちゃんだった
『ここじゃなんだし、場所変えませんか?』
確かに・・・ここのカフェにはかれこれ数時間お世話になっている
お店の迷惑だ
こくんと頷くとなるせの腕も外れ、体が自由になった
『じゃ、自分お会計してきますね〜^^』
とスマートに席を立ったあらきさん
それに続いてなるせも席を立った
伝票を持って行かれてしまったので自分の会計がわからない
「私の・・・」
『なるせがするから大丈夫です^^』
めいちゃんが優しくフォローしてくれた
その優しさも今の緩くなった私の涙腺には効いてしまい、また視界が揺れた
もう感情がぐちゃぐちゃだ
えぇ!!っと焦るめいちゃんに会計を済ませた2人が帰ってきて、何やってんの、と鋭いツッコミをいれていた
結局なるせの家に行くことになり、私は荷物を乗せていたあらきさんの車に乗ることにした
・・・と思っていたのに、強く腕を引かれあっという間になるせの車に乗せられていた
私もなるせも一言も発せず、すぐについたなるせの家
リビングに4人で座り、沈黙・・・
もう帰りたい・・・悲しい・・・
今なるせといるのは悲しい・・・
私はソファーの上で体育座りになり、膝に顔を埋めた
「帰っていい?」
そのままの状態で問いかける
「・・・! だめ」
肩を抱かれ、頭はなるせの胸に引き寄せられていた
今度はもう抵抗することもしなかったが、涙が止まらないから顔もあげられない
「思ったこと全部言って?」
さっきと同じことを問いかけられた
314人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「歌い手」関連の作品
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:カニカニハンマー | 作成日時:2021年11月30日 19時