俺だけの天使。３

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「村上部長！待って下さい！
赤字んなんの分かってて、
なんでこんな仕事受けるんすか？
坂下美羽ん父親がやってる、
ショッピングモールやからですか。
あのコネ入社の新人に、
どこまで気ぃ使えばいいんすか？
そんなんおかしいやないですか！
こんな仕事受けたら、
こっから年末まで、
誰も休みなんて取れません。
それこそ、規定違反ちゃうんすか」


半端開いた扉から、
亮の必死な声が、
部内中に響いた。


この仕事ひとつだけを切り取れば、

亮の言う通り、
うまくいってとんとん、
下手したら大赤字やし、

しばらくは休日返上で、
がむしゃらに働かな追いつかんのは、明白や。


けど、仕事って、
短いスパンでだけ考えてたらあかん。

亮かって、それは分かってるはずやのに。


「こっからSモールさんとは、
末長い付き合いになるねん。
この仕事断ったら、
後々大損する。
たった今からこの件に、
亮に口出しする権限はない。
それから。
パワハラは絶対にやめろ。
忠告しとく。
次は注意で済まんからな」


「分かりました。
そこまで言うんなら、」


亮がそこまで言いかけたから、
これはヤバい！て、胸騒ぎがして。


「ちょっと待った！」


叫びながら、
会議室まで、猛ダッシュ。


勢い余って、
扉の真ん前の村上部長の、
じょりじょりの顎に、
ちゅうしてまうとこやった。


避けてくれたらええのに、


「なんや、ヤスまで。
なんか用事か？」


村上部長が、
さらに、顔をぐいっと近付けてくる。


近い近い近いって！！！


「悪いけど部長会議の時間や」


俺の肩に手を置いて、


「ヤス、お前も忙しいやろ。
さっさと働け。
うまいこと、美羽ちゃんに仕事振れよ」


そう言い残して、村上部長が会議室を出てって、
ひとまず、胸をなでおろした。


「亮、どうしてん。
さっき、やめる、って喉まで出かかってたやろ？
短期は損気や。
絶対に軽はずみはあかんで？」


亮とは、高校、大学の同級生や。


就職で離れたけど、
亮が前の建築事務所辞めるって言うから、
うちに、俺が引っ張ってきた。


「・・・」


いつもなら、ごめん、章ちゃん、て、

しゅんてなってすぐに謝るのに。

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