俺だけの天使 ２

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「俺が見ると、望、いっつも目ぇ閉じるよな」


急に恥ずかしい指摘されて、
ほっぺたと耳に熱が集まってく。


「その奥まった目のビームにやられへんようにしてんねんっ」


とんでもない言い訳が、口から飛び出してきて、
ますますどつぼ。


「俺の目って、ビーム出してんの？」


流星が吹き出した。


「そうや、大量ビームや」


視線なんか合わせてもうたら、
たちまち一番奥まで吸い込まれてまう。


そこにあるのは、
目を背け続けてきた、

泥沼の流星地獄やねん。


早く、流星のまなざしから逃れなあかん。


頭では分かってんのに、ここから動かれへん。


甘やかして欲しいねん。


「目ぇ閉じてる望は特別に可愛ええ」


「きしょいこと言うな」


「事実やで？」


流星の綺麗な手が、俺の頬を包み込む。


も、心臓、もたん。


「うわっ、スイカで手ぇベタベタやった」


「何してくれとんねん、流星のアホ！」


立ち上がった時に、流星の電話が鳴り出した。


まるで、

二人きりの時間は終わり。


そう告げるように。


流星が人差し指だけでタップして、
耳と肩で挟んで電話に出た。


「なんちゃらかんちゃら・・・」


全く聞き取られへんけど、フランス語？


すげ・・・


大学もモデルも辞めて、
フランスに留学してたんは、知ってるけど。

遊び行っただけなんやて思てた。


無駄にカッコええとこ、見せつけんなし。


心ん中で言いがかりつけて、
社長室を出てきた。


トイレ入って、
少しベタついた手と顔を洗う。


綺麗さっぱり、流星への想いも流せたらええのに。




３階の倉庫に戻ったら、
試着が始まってた。


濱ちゃんだけはまだいつものジャージ。


「望、どこ行っとったん？」


濱ちゃんに微笑みかけられて、
また胸にずしっと重しされた。


「トイレ」


「望、でも、なんか甘い匂いせん？」


濱ちゃん、鼻きき過ぎやろ。


「そんなことないはずやで」


「カブトムシが寄って来そうな匂い」


「どんなん、それ」


「田舎の夏の匂いした。
そんなわけないか」


濱ちゃんを好きになれたら良かったのにな。


優しくて穏やかで、
俺のこと包み込んでくれて。

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