カナダ1の家族【ranfren】【短編集】

ご近所さん【ルーサー】 ページ3

高い身長に茶髪

灰色のシャツ

その後ろ姿は確実に私のご近所さんだ

『お、ルーサーさんじゃないですか。こんにちは』

「あぁ…Aさんか」

決して笑顔を向けることはなく

それでも冷たくはない

私はそんな彼が好きだ

『ルーサーさんがこっちに行くなんて珍しい。
もしかしてこれからペットでも買いに行くんですか』

「弟に買ってあげようと思ってね」

『弟想いですもんね』

「そうだ。Aさんも一緒に選んでくれないか？」

『え、いいんですかそんなこと』

「きっと二人で選んだ方がいいものが選べる」

『二人…』

二人きりでお出かけ

それってまるでデート…

「Aさん？」

『あ、ごめんなさい！
はい、分かりました。いいペットをえらびましょう』

浮かれちゃいけない

彼にそんな気持ちなんて一切ないんだから

そんなことあり得ないんだから






ペットショップにつくと微かに嘆く声が聞こえる

「どんな人間をペットにしますか？」

「弟がどちらの性別を望んでいたか覚えていない…」

『彼は面白い子ならなんでも喜びそうですけど…』

悩み顔をしかめるその姿

自分のものにしたい

「ここに最近仕入れた人間がいます」

「僕は人間だ…こっちにこないでくれ…」

怯えているのか

はたまたここの生活に慣れたのか

「……」

ルーサーさんは硝子に張り付いくほど見定めていた

おいペットそこ変われ

『この人間にします？』

「あぁ、それがいいな」

ルーサーさんはそのペットを買った

ペットが入ったその箱を担いでいる

「今日はありがとう。今度お礼をさせてくれ」

『そんな、いいんですよ。
それではこれで…』

「あぁ、さようなら」

後ろ姿を眺めて余韻に浸る

あぁ

私はもう中毒なのかもしれない

この先に行きたくてもこの関係を保ちたい

届かせない想いを胸に押し込んで私は家に帰った





完

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