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5.再び ページ6


 仕事が終わり、少し重い体を動かし帰ろうとする。

 「なあなあ。今日いつものとこ行かね?お前がいると女バンバン釣れんじゃん?」

 同僚の言葉に首をふる。

 「俺は昨日行った。」

 「え、まじ!?どんな子?どんな子?」

 目を丸くし、ものすごい勢いで俺の肩を揺さぶる同僚の手を振りほどく。

 「昨日は……未収穫だよ。」

 「えーーーほんとかよーー!?」

 ぎゃんぎゃん騒ぐ同僚を置いて、家へと急ぐ。もうすっかり周りは暗い時間だ。

 昨日みたいな面倒ごともなく、今日こそはゆっくりと自分だけの時間を過ごしたい。

 いつものコンビニにより、おにぎりを手に取る。すっともう一つ余分なおにぎりに手が伸びハッとして手を止めた。

 「……くそっ。」

 そのままかごに入れレジで会計を済ませる。

 あれだけ言ったんだ。もういないだろう。いなかったら俺が食えばいい。幸運なことに今日はいつもよりお腹も空いている。問題ない。いつも通りだ。


 マンション前には誰もいない。そのまま階段を登り、廊下を見る。



 「…………………嘘だろ。」



 あいつは出会った時のように俺の部屋の前でうずくまっていた。なるべく小さくなるように膝に顔を埋め、顔をフードが隠している。
 
 「何してるんだ。」

 俺は近づき、そいつを見ないように部屋の鍵を開ける。

 「………。」

 何も言うわけがない。こいつは話さないのだから。

 「何も言わないなら、助けてもらえるわけ無いだろ。しかも俺はお前が嫌いなんだ。どこかへ行け。」

 背を向けたまま言う。今あの目を見たらまた俺は負けてしまう。目を見ないように。見ないように。

 「じゃあな。」

 家の中へと入り、ドアを閉める。

 ソファに座り、携帯を触る。Twitterを見て、LINEを見る。

 同僚がツイートしていた。

 「めっちゃ美人にナンパしたら成功した!!それでさ、その子によると昨日意味わかんない男に声かけたらめちゃくちゃ罵詈雑言吐かれたんだって。美人にそんなこと言うなんてやばいやつもいたもんだな。俺がぶん殴ってやる!!」

 立ち上がりキッチンへと向かった。マグカップを出し、牛乳を温める。

 牛乳を温め終わると2つあるマグカップに半分に分けて入れ、持って玄関へ行く。


 「早く入れ。風邪引くぞ。」

 
 そう言うと、ゆっくりドアが開き、猫が顔を覗かせた。
 

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作者名:金魚 | 作成日時:2020年4月9日 22時

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