幻想か、それとも、 ページ29
※フィクションです、勝手に殺してます、不謹慎です、許せる人のみ
「あんたの事なんて嫌い」
面と向かってそういう××は私の手の中の小さな壺の中に押し込められてしまった。
「いなきゃよかったのに」
心無い××も××と同じように燃えて小さな壺に収まっている。
その××と××に少なくとも影響を受けているであろう私は生きてる価値とかあるのかなーとかぼんやり墓を見下ろしながら考える。置いてある名も知らない真っ白な花がきらきらと陽を浴びて生を主張するのが嫌に目についた。根っこがないから枯れる他ないのに。
「…その花、ゼラニウムって言うらしいっすよ」
不意にかけられた声に顔を上げれば、墓場に不釣り合いなサッカーユニフォームと金髪を風に靡かせる青年が立っていた。
誰だろう、この人。
ともすれば不良に見えそうな彼は真摯な態度で私の隣の墓の花瓶に同じ白い花ーーーゼラニウムを挿した。
「そうなんですか。お恥ずかしい話ですが適当に選んだので、今初めて名前を知りました。」
「花言葉は"尊敬"なんすよ」
「……へえ。」
それだったら、なんとも××たちに送る花には勿体ないというか、似合わないというか。
折角買って持ってきたはいいけれど、花だけ手折って捨ててしまおうか、なんて一瞬考えてしまった。
青年は線香にライターで火をつけ、手を合わせた後にまたこちらに向き直る。
「××の墓参りですか？」
「…そうですよ。」
「実は俺もなんすわ」
そのまま線香に使ったライターをポケットから取り出した煙草につけ、一息、いや、一服、だろうか、を彼はついた。
尊敬、という花言葉を選べるような人だったなんて、と僻みと羨ましさがごちゃ混ぜになり、添える花を掴む手に力が入る。
「あ、折らん方がええですよ」
「はい？」
「それもう一つ花言葉があるんすよ」
「それは…なんですか」
「私はあなたの愛を信じない。」
「……はっ」
「はは、笑っとるやん。」
「気のせいですよ。」
「やっぱ、あんたもそういう人間か」
「尊敬くらいはしてました。」
「尊敬してただけや、そこに愛はない。」
「…一応、××ですから。」
「××だからなんや。それで発生する心の痛みなんかは幻想や。あったとしても行動は痛みを解消するための利己主義やで」
「なるほど…？」
ならば、今貴方に抱きかけているこの感情は、この胸の痛みは？
「すみません、詳しくお話し聞かせ願えますか？」
その答を知るべく、私は青年の真っ黒なそれを覗き込んだ。
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