あの人は死なないのか ページ2
「という訳で久しぶりだな」
「ノリが軽すぎて台無しじゃないですか」
今世で初めてあの人に会った瞬間、何もかもを思い出した私は頭を抱えていた。
「さあ、返事を聞こうじゃないか」
返事は来世でさせてくださいね、とは言ったけれども本当に返事をしなければならない事態になるとは思わなかった。
ニヤニヤと、昔よりも意地悪さが増したんじゃないかと思わせる笑みがこちらに向けられる。
そこでふと気づく。前世で見たときと容姿が変わっている…具体的に言えば、若返って見える事に。
「その前にいいですか」
「…なんだ、言ってみろ」
「総統、一回お亡くなりになったんですか」
「そうだゾ」
この人も死ぬんだな、と不思議な感覚に襲われる。
というか、それはつまり、
「愛する人、できたんですね」
「ああ」
肯定の言葉に、少しだけ息が詰まる。
愛する人ができて、その上でわざわざ聞いてくるなんてどこまでも意地悪な人だとため息が出た。
未だ、好きだった。
思い出す前の感情を全て上塗りしてしまうくらいには好きで、愛していた。
「もう一つだけいいですか」
「ええゾ」
「総統は、どう亡くなられたんです？」
愛する人がいる事実を見せつける彼を突き放すように言葉を吐く。ますます目を細めた彼にどこか苛つきと、…切なさ、だろうか、を覚えた。
「お前と同じだな」
「…そうですか」
「お前が死んだすぐ後の弾で死んだ」
「え？」
「やはりお前は俺の言葉を聞いていなかったようだな。」
「…どういう事です？」
「しょうがないからもう一度言おう」
「お前に愛を囁くために、死ぬ勇気がなかった俺を許してくれ。」
「愛している、A」
「それが、あなたの最期の言葉なんですか…？」
「ああそうだ。」
「言わなきゃ、生きてられたんじゃないですか」
「そうかもしれないな。だがお前は「返事は来世で」と言っただろう」
「そのために死んだんですか？馬鹿じゃないですか？」
「そんな馬鹿に惚れていたのはどこの誰だ」
「っ…」
「さあ、返事を聞こう。」
「俺と、付き合ってくれないか。」
「…ええ、喜んで。」
時空を超える壮大で、そして2人しか知らない小さな恋は、漸く始まりを告げたのだった。
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