【毒素】拾った二匹の犬は人間でした！？【wrwrd!】

17. 前轍の上の足(Side tn) ページ17

(Side tn)

2人でお皿を洗って片しているとご主人が思いついたように喋る。

「私はお風呂入るけど、トントンはどうする？」
「どうする、って」
「一緒に入る？」
「入る訳ないやろ！」
「そうだよねえ」

人間だもんねえ、と笑うご主人はどこか寂しそうで、なんだか心配になる。
断じて下心無しで犬のときに何回か一緒に入ったこともあったけど、それが無くなるとやっぱ寂しいんやろか…

「別に人間でも、一緒に風呂は入ると思うけど…あのな、入ってええ関係みたいなのあるやん？」
「あー…親子とか、恋人とか？」
「おん、こいび…」
「そうだ！きょうだい！」
「え？」
「トントンお兄ちゃんみたいだしさ、一緒にお風呂だめかな？」
「えぇ…」

もしかして俺は今究極の選択を迫られてるんやないか…？
恋愛対象やないお兄ちゃんポジとしての俺か、
恋愛対象やない飼い犬ポジとしての俺…

どっちにしろ恋愛対象にならへんやん


いやそうじゃなくて、

「あのなあ、Aさん。」

目をきらきらさせるご主人に罪悪感を覚えながら口を開く。

「俺は今、人間なんやで？確かに前まではAさんの飼い犬やったけど…今は違うやん。」
「何も違わないよ…」
「違う、俺はAさんのことが」
「違わないよ！！」

ご主人が声を荒げた、はっとしてご主人を見ると、頬に涙が伝っていた。

「Aさん…」
「違わないよ…2人ともなんで否定するのさ。
ちょっと前まで飼い犬だったのに、いきなり人間になって、人間として見て欲しいって、突然そんなことできないし、飼い犬としての2匹がいなくなるのは嫌だよ…」

貯めていたものを溢れさせるように言葉を吐き出したご主人は、その場に座り込む。


ご主人は、突然人間になった俺たち2人を、その感情を頑張って受け入れようとして、でも俺たち2匹がいなくなるのが耐えられなくて悩んでいたんか、と今更脳みそが理解する。
その上で俺は自分のこの感情を優先するのか。
ご主人の感情を優先するのか。

「ごめんね、トントン。こんな事言われても困るよね。」
「困らへん。むしろ、やっと本音言ってくれて嬉しいで？」
「…本当に？」
「本当やで。」
「トントンは優しいなあ」
「…Aさん。」
「…何？」
「話したいことがあるんや。」




俺はーーーーーーーー

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