やっと素直になれたからで、 ページ14
やっと素直になれたからで、
「俺さ、李々ちゃんと付き合うことになった。」
今は李々って呼んでるんだけどさ、と嬉しそうに笑う斗真に俺は喉まで出かかった言葉を飲み込んだ。
「良かったな。」
「これもヨコが色々セッティングしてくれたおかげだよ。」
斗真が李々を好きなことは本人から聞いていた。
初めて会ったときに一目惚れし、会うたびに好きになっていくと言われて、俺は斗真と李々が二人で会うようにセッティングをした。
一度告白したけど断られて、もう一度挑戦すると言っていたのも知っている。
斗真は本当に李々が好きだという気持ちが俺にも伝わってきたし、斗真なら任せられると思っていた。
それに、
ー俺は李々とは付き合わないよ。
ニノと李々が良さそうな雰囲気だったから付き合ったらいいやんとふざけて言ったとき、ニノは思いつめたようにそう言った。
だから、俺は斗真を李々に紹介した。
斗真は李々とまっすぐに向き合ってくれたから。
ニノもきっと大倉も自分の気持ちに素直になれてない。
李々も、そうだ。
何処かで我慢している。
アイドルという職業柄それが正解かもしれない。
どれが正解かなんて分からない。
「でもさ、泣いてたんだ。」
突然、斗真はそう言った。
「俺に好きだって言いながら、泣いてたんだ。」
喉がひゅっと鳴る。
「俺、李々が誰かを好きでいたことも、俺との狭間で苦しんでいたことも、きっとどこかで気付いてた。」
俺は何も言えずに斗真の言葉を聞く。
「でも李々が好きで、欲しくて、結局泣かせてる。」
それでも、手放すつもりなんてないんだ。
斗真はそう言った。
「…それで、ええんとちゃう。」
俺のせいで、と考えてから考えを改めた。
「李々は斗真の前で涙を見せるくらい素直になったことなんやと思うで。」
半分自分に言い聞かせていた。
恋愛なんて、綺麗なことばかりじゃないな。
ーやっと素直になれたからで、
(そのための涙。)
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キューピッドは横山くんだった。
お題配布元:;確かに恋だった
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作者名：しゃち | 作成日時：2016年10月26日 12時
