あなたのいる世界で笑ったこと―――【影山飛雄】 (ページ5)

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『ここまでで、何か思い出したことあったかな？』

もやもやっと思い出したような感じだ。
完全には思い出せないけど、線路歩いたこととかは覚えてる。

『あなたが私に告白したときのこと、覚えてる？』

鮮明に覚えてる。
あれだけAの性格を恨んだ事、なかったんだから。

「これからもずっと一緒にいてほしい、好きだ」

なんて、勇気を出して言ってみたのに。

「いきなりどうしたの？」

って言われるから、その場ですごい力抜けて。
なんなんだよ、とか叫んでしまいそうななかで必死に振り絞った言葉。

「告白だよボゲ、俺と付き合え」

って言う言葉に、嬉しそうにうなずいてくれたAが、今でも忘れられない。

喧嘩したのも結構覚えてる。
確か中３の頃で、あんまり怒らないAが声を荒らげて怒ってたのにとっても驚いた覚えがある。

ちょっとだけ、目を瞑って思い出してみた。

その喧嘩の原因は俺で、あいつはなにも悪くなかった。
なのに俺がきつくあたって、Aを心配させたから。

「飛雄のバカ！私心配したんだよ!?」

「…Aになんて、関係ない」

バシッ!!
乾いた音と共に、頬に痛みが広がる。
正面を向いた時、Aの目からは、涙がぼろぼろ零れてた。

「だって、だってっ…私のたった一人の大切な幼馴染だよ？関係ないわけない…!!」

「っ」

「…でも、そうだよね」

「…は？」

「私って弱いもんね、こうやってすぐ泣くもんね。飛雄にはもっと強い幼馴染がよかったのにねッ…」

「代わりなんてない」

「え？」

「俺にとってお前は特別だ。だから関係なくない、ごめん」

「…うん」

そう言って、２人で笑い合って。
本当に幸せな時間だった。

あのころの俺は、Aが遠くに行ってしまう事さえも気付いてなかったんだ。