【番外編・ハイキューの日記念】思い出せなくなるその日まで ２ ページ37
例えば、あなたといた、あの日々を、愛おしい記憶を、すべてすべて消し去って、なにもかも忘れてしまうことができたとしたら。
でも、それはもう私じゃない。
あなたと、幸せ一つを分け合って、笑っていたんだから。
私の半分はあなたでできていて、きっと、あなたの半分は私でできていたんだろう。
それならこんなに胸が締め付けられて痛いのも、涙が出そうになるのも、仕方がないことなんだろう。
そんな感情に包まれながら、ギターの本を数冊取って、またあの本棚を目指す。
哲学コーナーの本棚は、2m以上はあるフォルムを放っている。
そんな中で、ひとつ、気になる本を見つけた。
『オレンジ』と書かれたその本は、もう何十年もここにあるような雰囲気をしている。
何かの魔力に取り付かれているようなその本に、思わず手が伸びて。
その刹那、誰かと手が触れ合う。
｢っ｣
あの、常連くんだった。
｢あ、ごめんなさい！｣
本を譲ろうとするけど、なぜだか脳裏に浮かんだのは飛雄で。
ちょうどこの冬という季節の上で、いつかあなたとしたケンカを思い出した。
それこそくだらない理由で、仲直りもいつの間にかだったし。
「いいですよ、俺は。お譲りします」
彼はそういって、私に本を差し出す。
なぜだか、目の前のこの人が飛雄と重なって。
春になればまたきっと、花というものは咲くのに。
私の心はあなたを見つける限り、冬のままだから。
色なんてついてなくて、悲しい景色のままで。
「いいんですか？読まなくって」
「はい。ここにはよく来るし、また見つけたら借りるんで」
「すみません… じゃあ、お言葉に甘えて」
本を受け取って、ギターの本の群れにいれる。
途端、その人の目が変わった気がして。
「ギター、好きなんですか？」
「はいっ。伯父がバンドハウスやってて、物心ついたときからなぜか音楽だけは好きで…」
「へぇ… 俺の知り合いにもギターすごく上手な人がいて、よく一緒に歌ってました」
「そうなんですか…」
心の中で、確信が生まれる。
この人、飛雄の生まれ変わりなのではないか。
なぜだか、その考えが頭の中で繋がって離れない。
｢……っ｣
左手で、右側の首筋を掻く癖。
飛雄の癖と、一緒だった。
間違ってるかもしれない。
この人は飛雄じゃないかもしれない。
でも、でも。
私はきっと、この人に聞かなきゃ一生後悔する気がするから。
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しょうどうぶつ(プロフ) - ラテ。さん» 是非読ませていただきます！ (2018年11月9日 22時) (
レス) id: 4dcfc1ef4e (このIDを非表示/違反報告)
ラテ。(プロフ) - しょうどうぶつさん» コメントありがとうございます！感動して頂いたようで嬉しいです！ハイキューなら他のものも書いていますので、もしお手すきでしたらお読みになって貰えると嬉しいです('ω')こちらこそ参加させて貰ってありがとうございました！ (2018年10月25日 23時) (レス) id: 09073fe647 (このIDを非表示/違反報告)
しょうどうぶつ - 飛雄〜！最高です。感動しました。.....参加ありがとうございます。 (2018年10月25日 23時) (レス) id: 4dcfc1ef4e (このIDを非表示/違反報告)
ラテ。(プロフ) - 親方さん» ありがとうございます！ 言葉の使い方はかなり意識してるので、誉めていただけるなんて光栄です！ 純真無垢に相手を想う飛雄ちゃんは書いてて楽しかったですよ(笑) (2016年4月19日 17時) (レス) id: 09073fe647 (このIDを非表示/違反報告)
ラテ。(プロフ) - 夜月さん» ありがとうございます！ 涙腺ぶっとびましたか、人を泣かせるのはいけないことですよねw お気に入り押されたっとな(笑) (2016年4月19日 17時) (レス) id: 09073fe647 (このIDを非表示/違反報告)
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