星屑の水槽 (ページ2)

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一昨日まで人生を終わらせるはずだった私が昨日の一言で今日も生きてしまった。

いつものように医局に入っても同僚の接し方はいつも通りでユンジョンハンさんが言わないでいてくれたんだな、と彼の優しさに心の中でお礼を言った。

いつもより患者さんは多くて少し遅く退勤した。そして昨日の場所へと足を進める。いくら私が遅く終わったからと言ってまだ来ていないだろうな、と思ったのに彼は昨日と同じ場所に立って私の姿を見ては安心したように微笑んだ。

「よかった、遅かったから来てくれないかと思って。」

ごめんなさい、残業してたんですと言うとまた安心したように見えた。

二人の間に無言の空間が続く。この沈黙が耐えられなくて、彼に言葉を投げた。

「言わないでくれて、ありがとうございます。」

「当たり前でしょ。」

お礼を言われると思っていなかったのか、驚いたように私を見て、俺はそんな酷い人間じゃないよ、と笑った。

「何があったか聞かないけどね。俺はAさんに生きて欲しいよ。ごめんね、ほとんど初対面でこんなこと。」

「名前、知ってたんですか。」

「ん？チェ・Aさんでしょ。救命科の優秀な先生だもん、知ってるよ。」

優秀な先生、と言われたことが嬉しくて、でもこう面と向かって言われたことはなくて、勉強頑張りましたからなんて可愛げの無い返事をした。

「Aちゃんって呼んでもいい？今日から友達ね。これ、俺のカトク。」

目の前に出された彼の連絡先。私の友達？新しく友達ができたのはいつぶりだろう。固まって何も言葉を発さない私に少し怪訝な顔をしているように見えたから、

「わ、私もジョンハンさんって呼んでもいいですか。」

私はあなたと友達になることを嫌だとは思っていませんよ、むしろ嬉しいですよ、という思いを回りくどくこの言葉に込めて発せば、彼はまた優しくうん、と笑ってくれた。

なんとなく普段の職場の話をして、気温が少し下がった時間帯。

「ごめんね、俺は用事あるから帰るね。」

立ち上がって手を振って歩き始める。少し歩いてから、ここから見えなくなる直前にジョンハンさんは振り向いてこう言った。

「今日から俺を生きる意味にしてもいいよ。」

最後の一言で何も考えられなくなってしまった。驚いて何も言えなかったけれど、あなたを生きる意味にさせてもらいます、と心の中で彼に語りかけた。