10 橙 ページ10
橙サイド
「何やと？お前ら、何やってんねん！！」
いつもの部屋。あれからいくつか仕事をこなし、今日も呼び出されたはいいけど、ボスの荒れようが尋常ではない。
「マル…マル！！」
「はい。」
「忠義がさらわれた！」
「え？」
「お前に何度か頼んだやろ？任務を代われって。小さい頃から大事にしてきた。それやのに！」
壁に思い切り投げつけられたスマホが簡単に割れる。ボスの息子みたいな存在。俺とは扱いが違う恵まれた奴。
「くそっ！」
ボスは心配して俺を任務に向かわせたけど、あいつ、そんなに悪い腕やなかった。勘も良さそうやし。俺が横取りするの、憎らしそうな顔で見とったな。いや、それより…
「さらわれたって、なんで？」
「あいつは…くそっ！はよ行け！探せ！」
狂ったように叫ぶおっさんが煩くて立ち上がる。今日は相手せんでもええのかとどこかホッとしたところに、後ろから抱きつかれた。
「あかん。マル…あかん。お前は行ったらあかん。おい！！」
部屋の電話を乱暴に持ち上げて、きつい口調で命令をする。
「お前らだけで探せ！生きとったらええ！国の総力をあげて探せと政治家どもに伝えろ！」
政治家…？そんなに大事？
「ちょ……」
乱暴に電話を床に投げつけ、そのままの勢いで俺にしがみつくボス。
「マル…」
抵抗する気力なんて随分前になくなった。ビリビリと破れるスーツ。ボタンが引きちぎられ、現れた俺の肌に必死に吸い付く。
「きれいや…」
こいつはなんでこんなにも俺に執着するんや。息をするのがやっとだった苦しい尋問。そこに現れたこいつは、目があった瞬間、欲にまみれた笑顔を見せた。
「何も言わんでええ。その代わり、今日からお前は俺のもんや。」
そして連れてこられた大きな屋敷。その奥にある豪華な部屋。
「運命や。お前との出会いは運命なんや。」
理由のわからないことを、体を重ねながら何度も何度も繰り返された。
一度逃げようと部屋から脱走した。でもすぐに捕まって、次の日には母親が顔や身体にあざを作って、気絶した状態で目の前に転がされた。
「母さんっ！！母さんっ！！！」
「大丈夫や。生きとる。」
「だ、大丈夫って…お前っ！！」
殴りかかろうとして、周りの奴らにボコボコにされる。
「ｸｯ…」
「ええ顔や。たまらんな。マル。俺のもんになったんやろ？逃げたらあかん。な？」
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作者名：orange | 作成日時：2023年12月29日 23時
