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しげしげと見られながらどうしたものかと思っていると、いきなり部屋の扉が開く。
「村上くん、うるさいわぁ。」
「え…」
突然入ってきた小柄な男。普段着なのか、随分ラフな格好をしている。
「あ、どうも。村上くんかて男前やで?足もめっちゃ長いし。」
その言葉に、一気に嬉しそうな表情が浮かぶ。
「ふふ。せやろ!!」
周りの空気を吹き飛ばすようなでかい声。これ以上ないくらい満足そうにしてる。単純…いや、純粋そうな人やな。
いつものことなのか、小柄な男はそのまま話を続けた。
「飯作るわ。何がいい?」
「まだ大倉さんとの話、終わってへん。」
「あ、そうなん?でも、腹減ってるやろ?」
「それはそやけど…。あ、大倉さん、こいつヤス。」
そう言われて軽く会釈すると、柔らかい笑顔で応えてくれた。
「ヤス、デリケートな話やから順を追って話してんねん。ちょっとそぉっとしといてくれるか?」
「そぉっとって。村上くんにそんなんできる訳ないやん。」
「はあ!?」
村上さんが抗議をしようとすると、今度はドタドタと誰かが走ってくる音。バタンと扉が開く。
「ヤスー!めしー!」
「亮、あかんねんて、デリケートな話やて。」
「はあー!?デリケートォ?村上くんにそんなんできるわけ無いやん。」
「うっさい二人とも!もう飯作って食堂に用意してくれ!」
「おーし。今日はどうするか…」
「にーく!にーく!」
「お前、肉ばっかりあかん…」
賑やかな2人が部屋を出ていく。さっきまで緊張していた気持ちが一気に緩んでいた。
「すまんな。あれも仲間や。あんたのことは伝えてる。とりあえず、しばらくここにおってもらう。確保できたことを連絡して、あとの指示待ちや。」
「でも、仕事が…」
「…命、狙われてんのわかったやろ?」
「…」
「首謀者は…」
「やめてください!」
村上さんの言葉の先を聞きたくなくて咄嗟に叫んでた。
「今回はあんたのボスじゃない。ボスを敵視する連中や。」
ゆっくりと伝えられた言葉にやはり衝撃を受ける。
「…今回は?」
「詳しくはまだ言われへん。でもあんたが大切に育てられたんは、人質として重要人物やからや。」
「人質?俺が?」
「そう。セレーネの人質。」
突然でてきた国の名前。それは俺らが敵国として扱ってきた国の名前。
「じゃあ、あんたらはセレーネの?」
「そう。長年解決してなかった大倉さんを取り戻す任務を引き継いだ。」
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作者名:orange | 作成日時:2023年12月29日 23時