7 緑 ページ7
緑サイド
「もしもし。」
「あ〜…えらい遅かったな。あんた今どこ?」
「え?」
真っ直ぐでこだわりのない声。何も答えられないでいるとスラスラと話しだした。
「あんた目立つからな。そやな…」
言われたのは飲食店の名前。自分の進むべき道が分からず怖いけど、もうそこに向かうしかない。確か賑やかな通りにある店の名前や。
次第に混み合う道を、慣れているように装いながら歩き続けていると、背後に気配を感じた。
「そのまま俺についてこい。」
後ろから声がしたかと思うと、一瞬目の合った男が颯爽と歩いていく。
またつけられてるんやろうか。とにかく見失わないようにしないと。
結構なスピード保ちながら、人混みでもぶつからないよう注意して歩いていく。
入ったのは地下の店。扉を開けた瞬間、思い切り中に引っ張られ、声を出すなと合図される。しばらく聞き耳を立てるけど、特に怪しい音はしない。
「ふう。ようついてきたな。つけられてはないわ。奥の部屋へ行こか。」
厳重にロックをし、奥へと案内される。きれいに整理された部屋に落ち着いたデザインのテーブルとイス。
「まぁ、座り。飲み物出しても怪しむと思うから、まずは話から。とりあえず、何が聞きたい?」
聞きたいことは山のようにある。目の前の明るく生き生きとした表情の男は、「どんな事でも聞いてや」とうながしてくれた。
「あなたは?」
「俺は村上信五。何と言うか、まぁ、情報屋や。」
「情報屋?」
「そ。ボディガードでもあるし、スパイみたいなこともする。大倉さんのこと、ちょっと頼まれてな。」
「頼まれた?誰に?」
「ん〜…まだ言われへんな。」
「横山さん?」
「あいつはこっちの仲間。」
「え?」
「まぁ、スパイも複雑やで。」
「よくわからない。」
「そうやろな。あんた、自分の出生も知らんやろ?」
「はい。」
その先の答えを待っていたけど、村上さんは急に黙り、じっとこちらを見る。何か変なことを言うたか…?
「…しっかし男前やなぁ。どうなってんの?」
「は?」
真っ直ぐに見つめられ、思わぬことを言われて戸惑う。
「背も高い、声も渋い、顔も小さい、パーツも揃ってる。こんな不公平あるか?」
「いや…」
「おっかしぃやろぉ!神さんもよぉこんな事するわぁ!」
「あの…」
「あんたも自分でそう思わんかぁ??」
「え…と…」
初対面の人にこんなこと思ったらあかんと思うんやけど…めっちゃ声がうるさい。表情もうるさい。
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作者名:orange | 作成日時:2023年12月29日 23時