monogram (ページ6)

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橙サイド

「マル。」

「…」

「マ〜ル。」

「ん…」

「俺の前で熟睡やなんて、疲れてるんやな。」

「え…」

頭が激しく何があったのか確認しようとする。ボスと車に乗り…飯を食って…そして…

「マルの身体はなんでこんなに柔らかいんやろな。」

そう言いながらボスの手が俺の身体を探る。

「俺…」

「疲れてたんや。かわいい声出して、そのまま眠ってもうたんやで？マルにしては珍しく無防備やな。」

トーンを落とした声に、心の中で舌打ちをする。

「何した？」

「こわぁ〜。そんな目で見られたら興奮するやんかぁ。マル、昨日のやったら足りひん。」

覆いかぶさるボスから逃げるために身体を起こそうとするけど、思うように動かない。

「動きにくいやろ？特別な飲み物を用意したからな。」

飲み物？一体何を…

「ｸﾞｯ……」

「かわいいなぁ、マル。お前のその顔…たまらんわ…」

こんなおっさんにいつまでも…。

この国で捕らえられて、散々な仕打ちにあい、意識が朦朧としていた時に現れた尋問官。

こんなことになるくらいなら、いっそのことあの時終われていた方がよかったのに…

「そんなに母親が大事か。マルはほんまに優しい奴やな。」

俺がエリートになって働いていると信じている母親。父親がおらんくなって、俺を育てるために必死に借金を返し、育ててくれた。

「マル…」

すっかり変えられた身体は俺の意志なんて関係なく反応する。

欲を満たしてベッドに満足気に倒れ込んだボスは、動けない俺を何度も撫でてから腕の中に包んだ。

「俺だけのマル。お前だけが生きがいや。」

肌にふれる唇が、いつもと同じセリフを繰り返す。

「うるんだ瞳も、その真っ赤な頬もみんな俺のもんや。マル？眠いか？」

あかん…また眠ってまう…。どうやったらここから出られるんやろうか…。いや、もうどうでもいい…俺なんて。

「ほんまに閉じ込めときたいんやで？でもな、政府の奴らがスパイとして働かせる事を条件にしてもうたから、しょうがないんや。」

俺を引き取った時の条件。俺の生きる意味はどこにもない。ただ言われるまま。唯一母親のために。母さんは俺を育てるために本当に苦労してくれたんやから…

「しばらく寝とけ。起きたらまた仕事や。」

仕事…。いっそのこと仕事中にどうにかなってしまうか…

「マル、愛してるで。」

ボスの言葉を遮りたかったのか。バタンと扉が閉まったように眼の前が真っ暗になり、そのまま意識を手放した。