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「飲む。マルがついで。」
「ん。どうぞ。」
こんなに美味い酒は久しぶり。妙に浮かれている自分に、なんだか心地よくなりながら、酒に酔っていく。
わいわいと煩すぎる食堂。そのうち食卓ではなくソファやカウンターに腰かけて寛ぎながら、今日のマルの活躍の話になる。
「おし!ほんならマルのマネしたるわ!見とけよ。」
横山くんがおしぼりを片手に場の真ん中に出てきた。そしてすっと無表情になって、銃代わりのおしぼりを片手で構える。
『銃、渡して。』
「お〜!!」
「凄かったよなぁ!迫力すげぇあったもん。見惚れたわ。スッと現れて銃構える感じ、俺が女子やったら落ちてる。完全に落ちてる!」
くそ…見たかった。簡単に捕まった俺が情けない。今のをマルでリピートして…
すると亮ちゃんが、いつものワンちゃんの瞳を輝かせてマルに問いかける。
「お前、モテた?」
「いや。自分から行かんと。」
「え、マルが口説くん?どんな感じ?」
「普通。」
「ちょ、ヤスにやってヤスに。」
嫌なノリやな。なんでヤスやねん。そんなことマルがするわけ…
「え?」
頬杖をついて、マルがじっと俺の方を見ている。騒いでた声が止み、シンと静まる中、マルがすっと立ち上がってこちらに来た。
「隣いい?」
すっと隣に座るマル。カウンターに軽く頬杖をついて、少し下から上目遣いにじっと俺を見る。
何これ…。マルがめっちゃ近い。
「なぁ、こっち見て?」
緊張した体。あかん。自然に。わ…マルの目が…
「ふふ。めっちゃかわいい。」
髪を撫でられる。
「なぁ。俺と朝までおってくれへん?」
「わーー!!」
「ヨコォ!なんでやねん!お前良いとこで声出すなよぉ!!」
「あかん。堪えられへん。おまえらよぉ見てられるな!」
「シャイなとこ出たな。」
「何でヨコが一番赤なってんねん。」
「待て待て。俺の気持ちは?」
ドキドキしてる俺を放っておいて、自分の席に戻るマル。
「お前、罪な男やなぁ。悪女や悪女。」
「男か女かどっちやねん。」
「みんなそんなもんやろ?」
「ニヒル!!やめろ、その顔ぉ!」
嬉しそうに笑うマル。なんや、そんな自然に笑えるんや。
「マル、ほら、ジュース飲め!」
あかんな。マルの笑顔に見惚れてまう。
「あ。」
マルがこっちを見た。俺の目を見てさらに深くなる優しい笑顔。
なんやねん…。心臓、潰れるやん。
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作者名:orange | 作成日時:2023年12月29日 23時