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緑サイド
「マル〜、これも食べぇ。マル、肉好きやろ?」
亮ちゃんもヤスも、怪我なんかしてないみたいにはしゃいでる。コミュ力の高いヤスはマルにせっせと料理を勧めだした。
「酒はまだやめといたほうがええな。あ、俺のことは章ちゃんって呼んで?」
「は?ヤスでええやん。」
「大倉は黙って。マルには章ちゃんて呼ばれたいねん!あと、亮のことも亮ちゃんって呼んだって?」
「…亮ちゃん。」
「お、おう!照れるやんけ。」
あれ。なんで俺だけ大倉?俺もなんかいいやつ……
「たつくん!」
「え!?」
「なんや?」
「あ、村上さん?え、今のって俺のこと?」
「おう!たつくんてかわいいやろ。俺のことは信ちゃんって呼べ。おい、マルも!」
「はい。信ちゃん。」
「そうそう。それでええ。」
「マル、章ちゃんて呼んで?」
「章ちゃん。」
調子にのったヤスはマルの肩を抱きながら楽しそうにみんなの呼び方を教えてる。
距離感バグってるやん。離れろって。さわんなよ。あ!頭まで撫でた!
「よしよし。あの人はしぶやん。ほんで横ちょはゆうちん。」
「しぶやん…ゆうちん…」
「横山でええわ!マル、全部言う事聞かんでええねん。これまで通り…」
「うそや!横山くん、今嬉しそうな顔した!ゆうちんでええやん。な、マル?」
「ゆうちん。」
「なっ!…好きにしたらええわ。それよりお前、食べすぎんなよ。しんどくなるぞ。」
顔を真っ赤にした横山くん。なんか、マルにみんな甘くない?俺の時こんなんやった?
それに、マルもそんな素直に呼ぶことないと思うんやけど…
「マルさぁ、素直すぎひん?そんな、急にみんなのこと…」
「たちょ。」
「…」
マルが急におっそろしい可愛い呼び方をして頭が真っ白になる。
一気に集まった視線。た、たちょ?なんやねん…心臓に悪いやん!
「大倉ぁ!顔真っ赤やんけぇ!」
そんな言葉を無視して必死で平静を装う。さらに盛り上がるみんな。
「マルってそんな感じなん?もっと距離のある奴かと思った。冗談なんか微塵も言わへんタイプちゃうの?」
「言わん。」
「怪しい!こいつ怪しいぞ!むっつりや!!お笑いむっつり!」
「フッ…」
「ニヒルに笑うなぁ!!」
あ〜と、え、俺の呼び方は?た、たちょって…
「大倉、飲まへんの?」
え…。大倉に戻った。
「どうした?」
ちょっと拗ねた気持ちになりながら、でも、酒瓶を傾けながら優しい声で聞いてくれたことにうれしくなる。
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作者名:orange | 作成日時:2023年12月29日 23時