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「あの、大倉は？」
「…なんで？」
「いや、仕事やと母が言っていたので。もしかして何か…」
「気になる？」
「それは…。彼には、お世話になったので。」
「実は任務を任せた。」
「…」
「興味ある？」
「…はい。」
「これ、大倉に渡した資料。ほんでこれが大倉とヨコの見通し。」
そこには襲撃事件の詳細が書かれていた。
「これ…」
「ん？」
松岡さんや。二人とも気づいたやろ。なかなか良い作戦やけど…
「丸山さん。」
「…はい。」
「どうしたい？」
「え？」
「今、どうしたいと思った？」
じっとこちらを見つめる強い視線。
「…試しました？」
「いや、そんな悪い言い方せんでも。わかりやすいかと思ってな。」
なるほど。これまでのことが染み付いてる。頭の中は、この作戦をいかに成功させるかを、すでに考え始めていた。
「…そうですね。この任務、関わりたいです。」
「危ないか？」
「危ない…ことはないけど、不安は残る。」
「丸山さんから見ても、松岡という奴は恐ろしいか？」
「それは。戦闘能力の高さはもちろんですけど、度胸と経験と感の鋭さと。一対一ではやりあいたくない相手です。それと、警察との連携が気になります。」
「ん。じゃあ、助っ人頼むわ。いや、組織に入ってもらえるなら、任務の遂行を命じる。ただし、自分が犠牲になればいいという考えは捨てること。」
「それは…俺なんか別に…」
「その覚悟では困る。丸山さんが任務につくなら、あんたはもう俺等の家族や。自分で命を守ろうとしてくれな足手まといになる。」
その言葉に、ふと、大倉の温かい腕の中を思い出した。あいつだってここに来てそんなに長いわけじゃないはず。それなのに、久しぶりに見たあいつはとても穏やかな顔をしてた。
「家族…」
「そ。この組織、チーム、みんなで家族。」
そんな甘い関係でこの仕事が出来るんやろうか。人の生死に関わる仕事。汚い部分がほとんど。そんなことをまた…でも…
「よろしくお願いします。」
頭を下げていた。大倉の笑顔を守りたい。瞬時にそんなことを思っていた。
「じゃあ、ここにサインを。」
差し出された契約書。スパイとして雇うわという渋谷さん。思った以上の契約金。
「え、もっと上かと思たわ。」
「いや、俺の実力なんて知らないでしょう？」
「ヨコから聞いてるから。何やもっと安くて良かったんかいな。まぁええわ。サインして、はよ丸山さんに合う銃を探しに行こう。」
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作者名：orange | 作成日時：2023年12月29日 23時
