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帰り際、タクシー代やと渡された札の間にメモが挟まれていた。家に帰り、部屋を隅々まで確認してからそのメモをみる。

電話番号…?

ここにかけろということか?いや、待て。そもそも横山さんは信頼できるんか…?

(コンコンコン…)

突然ドアをノックする音に動きを止める。なに、つけられた…?誰に?

(コンコンコン…)

部屋を見渡す。逃走用のバッグ。窓の外は…

静かに鍵がゆっくりと回る。こんな遅くに勝手に鍵を開けて入ってくるような知り合いはいない。

迷ってる暇はないらしい。窓の外に出て、部屋の中に侵入した影を確認する。

1人…2人…

何かヒントはないか様子をうかがう。俺が目的ではないのか…?侵入者たちは、あちこちの引き出しあけて何かを探していた。

なんや…俺が持ってるものなんて…

考えていると、マンションの外からも人の気配。とりあえず、どこか別の場所へ行かなければ。

体を動かした瞬間、小さな銃声。やばい。素早く身を翻し木の陰に身を隠す。

どこや…

その時こめかみにピタリと冷たいものがあてられた。

だれ…

冷や汗が体を伝う。何もできず、次に鳴った銃声に命が尽きたかと思ったら、倒れたのは相手の方。

「え…?」

「逃げろ!」

その声に素直に従う。とにかくこの場から離れて態勢を立て直さないと。

デタラメな道をとにかく走る。後方で聞こえた数発の銃声。誰が敵で誰が味方…?

「あら…」

ここに頼って大丈夫か…でも迎え入れてくれたいつもと変わらないその女の笑顔に安堵が広がる。

「なにぃ?今日はフリーなの知ってたの?」

「いや。ちょっとお前に会いたくなって。」

「そんな荷物で?」

「出張帰りでね。」

「ふーん。こんな遅くにねぇ。まぁ、いいわ。相手、してくれるんでしょ?」

首に巻き付く細い腕。キツめの香水が今は心地良い。

「もちろん。」

「汗、すごいじゃない。」

「嫌?」

「…ううん。」

熱い身体と冷静な頭。いくら貪っても消えない不安。激しさに気絶する女をゆっくりと横たえて、タバコに火をつけた。

逃がしてくれたあの声は、一体誰やったのか…

どこからはじまった…?何かきっかけがあるはず。ボスに知らせる?横山さんは…

考えれば考えるほど行動にうつせなくなる。

あの電話番号…そこに頼るしかないのか。

メモを見つめる。もはや相談できる相手はいない。夜が明けるのを待ち、女のもとを去ってから、メモどおりにスマホの番号を押した。

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作者名:orange | 作成日時:2023年12月29日 23時

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