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39 橙 ページ39

橙サイド

体が軽い。ひと月以上ベッドの上で過ごして、ようやく自分で起き上がり、歩けるようになった。

「マル、どうする?庭に出てみる?」

ここに来てからは半月ほどやろうか。大倉はこの部屋で一緒に過ごし、面倒を見てくれていた。

「そうやな…」

「なんかあったら支えるやん。」

「いや、重いやろ。」

「休憩すれば結構歩けるようになったんやから、毎日練習せんとな。先生も回復が早いって言ってくれてたやろ?」

寝たきりというのは恐ろしい。体が起きた状態を忘れるんやろうか。立った瞬間、頭がついてこれないのか、凄まじいめまいに襲われた。

「お母さんのお見舞い行くか?」

母さんは結局疲れが出たのか熱を出し、まだ本調子ではない。

「…お前にうつったらあかんから、今はやめとく。」

「ええよ。風邪ちゃうからうつらんて。」

「あかん。…お前、仕事抱えてるやん。」

「それは今に始まったことちゃうし。」

「もうそんな付きっきりとかええから、自分の部屋あるんやろ?そこで仕事してくれ。」

「それは無理。」

「無理?」

「うん。まだ本調子とちゃうし。マルの進路も決めなあかんし。」

「進路って…。俺は…」

ここに来て以来、回復することを優先にしてくれる大倉や横山さんに甘えていた。でもここは敵国。俺はマカリオスに…

「ここに残ってほしい。」

「え?」

「ここに残って、俺と…俺たちと一緒に働かへん?マカリオスのことも、みんなで解決して…」

「無理やろ。」

「なんで?」

「…」

このままここに…いや、あかん。執拗なボスのこと。俺がここにおることで、何が起こるか…

「迷惑…かけられへん…」

「迷惑とかない。それを言ったら俺もここにはおられへん。」

大倉が迷惑?そういえばこいつがさらわれた理由って…

「お前が攫われた時、ボスが怒り狂って政府まで動かしてた。どんな理由があるん?」

「あ〜…。マルはまだ知らんのか。」

それから、大倉が強力な兵器の鍵であることや、俺がこの国の大昔に存在した王妃に似ていること、そして、ボスが王家の研究者で、その王妃に没頭していたことを知る。

「そういや化学兵器って言葉を聞いたな。お前がその鍵?」

「全然自覚ないけどな。」

「それに、王家の研究?ボスのそんな話、初めて聞いた。」

「でも、肖像画、見たことあるやろ?」

「ある。派手な装飾で埋もれてたけど相当あったんちゃうか?」

「うん。1枚や2枚どころちゃうかった。」

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作者名:orange | 作成日時:2023年12月29日 23時

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